Act6.
"エルカミ"の魅力
EL CAMINO REAL
作曲:A.リード
私を吹奏楽の世界へのめり込ませてくれたのは、この我が校コンクール自由曲の"エルカミ"である。
" エルカミ"というのは略称で、正式には"エル・カミーノ・レアル"だ。
この曲は、空軍バンドとその隊長から委嘱をうけて
かの有名な「A.リード」が作曲し、1985年始めに完成した曲だ。
タイトルはスペイン語で「皇道」又は「王道」という意味で、
「武力や権力によらず、王者や皇帝の人徳によって国を治める」という願いが込められているらしい。
ラテンな感じで情熱的な曲なので
サブ・タイトルに「ラテン幻想曲」とつけられている。
曲の構成は、吹奏楽でよく用いられる「速い・遅い・速い」の三部形式で
速い部分は激しい三拍子の舞曲(フラメンコな感じ)
遅い部分は緩やかな三拍子の舞曲(哀愁をそそるメロディーがたまらない)となっている。
私が好きな部分は、展開部へ運んで行くところのパーカッションソロだ。
最初に、スネアが小さな音で、かつ鋭いリズムを打ちだす。
その上に、ウッドブロックがのっかって、少し経つとティンパニーの力強い音が入る。
そしてクラリネットの可愛いメロディーが入り次第に盛り上がっていく。
この感じが何ともたまらないのだ。いくら元気がなくてもこの部分を聴けば元気になれる。
「RIOちゃぁぁぁぁぁん!!!」
わぁ。猛スピードで何かが前を・・・と、思ったらI先輩だった。
こちらが、あのI先輩。
いつも元気・・・いや、超ハイテンションで、パート内を盛り上げてくれる。
打ち出す音はどれも華やかで、よく通る音。聞いていて気持ちよい。
喜怒哀楽が激しくて、結構三枚目な事をする。
そこがまた先輩のいいところ。
ちなみに、T先輩曰く、「シビアなお茶目さん」だそうだが・・・。
「ねぇねぇ、あのさ、ここ私たち合うよね?」
譜面をさしてI先輩が言った。
ギクッ。
こことは、あの一番難しいところ。やばし。
楽譜を見てみる。シロフォンとグロッケンのアンサンブルになっている。
I先輩の担当楽器はシロフォンだ。
「ねぇねぇ、やってみない?」
I先輩が言った。少しとまどった。
いや、物事何でもやらなきゃ始まらないのだ。
「はい、お願いします。」
灰色のグロッケンのマレットを手に取る。
手は、汗でびしょびしょに濡れていた。
心臓がドキドキする。
「いくよ。いち、に、さん、いち、に」
ずれた。
「すみません。もう一回お願いします。」
「わぁ!」「あった!」
「イエーイ!」
マレットで拍手をした。何回も飛び跳ねた。
それから、嬉しくなって何回もやった。
コンクールまでに何回やったんだろう。数え切れないほどやった。
夜。カセットデッキの再生ボタンを押す。
学校のCDをこっそりコピーして手に入れたエルカミーノレアルが流れてきた。