Episode8
Essay Index
Episode9
居住する国が違うと、其の国と私達との常識や道徳観念が必ずしも同じとは
限らない現実があります。
同じ日本人でも、いわんや一番近い関係の血の繋がった家族でも各々の考えが
違う事で、諍いが絶えない世の中なのですから、言葉や習慣、宗教、文化の違う
国で生活している人々の間ではなおさらの事です。
この歳まで国内外を通して、色々な場所で生活して来た私の処世訓は
“郷に入っては郷に従え!”です。
特に海外では、、、。
なぜなら、まず、第一に、私達はその国に住まわせてもらっている現実がある事。
(ビザを収得できなければ国外追放です。)
そして、彼の地での習慣や常識を知らずに生活する事で、周りから誤解を受けるのは、
誠につまらない事っと思っているからです。
幸運にも私の場合、それ程努力もしないで新しい土地に順応できる能力が他人
よりも、ちょっぴり多く備わっていたようです。
当時、香港や中国本土から移り住んだ多くの中国人たちが、移住先の国の言葉や文化
を全く受け入れず、自国での生活様式そのままで生活している状況を見て、
カナダ人たちが厳しく批判していましたが、そう言う彼らも、先住民族のインディアン達
を狭い居住区に閉じ込めて、ヨーロッパ様式の生活をしているのですから、人間とは
誠に身勝手な動物のようです。

さて、一軒家で住んでいた私達には、色々とその地域の煩わしい“決め事”がありました。



これらの写真の様にフロントヤードの芝の緑が美しい街並みは、 住人達の、
美しく環境を維持しようとする高い意識の表れわれだと思います。
11月から3月までの冬の間、雨の多い日が続く為か、品種の違う洋芝もあって、
日本と違い一年中鮮やかな緑を保っているのですが、雨の少ない夏場の水撒きは、
その芝の範囲も広く、結構重労働です。
新しく建築された家は、タイマー付の自動散水装置がすでに設置されているので、
そのまま時間さえセットしていればいいのですが、私達の様に40〜50年前の古い家に
住んでいた人達は、 蛇口から長いホースを這わせて、其の先に放射状に散水する回転式
ノズルを装着し、 数10分間隔で小まめに場所を変えながら、芝全体に散水しなければなりません。
其の上、積雪の少なかった年には、6月から9月まで必ずっと言って散水時間の規制が布かれ、
週二回(ハウスナンバーの偶数は水曜・土曜&奇数は木曜・日曜)の4〜9amと7〜10pmの間
でしか散水が出来ないので (花壇や生垣等は除外)用事や旅行等で其のタイミングが合わないと、
芝は直ぐ枯れてしまいます。夏場は雨も少なく、空気が乾燥しています。
枯らしてしまっても、決められた時間外に散水しても近所からクレームが来るので厄介です。
また、庭師を雇って定期的に芝刈りをさせていましたが、それも怠ると直ぐにクレームが来ます。
通常、上の写真で見られる歩道の外側の並木のある場所は、私有地ではなく公の土地なのですが、
その芝も、同様に其処の住人が管理、手入れしなければなりません。
我が家は角地に建っていたので芝の広さも倍となり、 其の作業は本当に大変でした。
また、雪が降れば降ったで、家の周りの歩道の雪かきをしなければ、
万が一、其処を通行している人が滑って怪我でもしたら、おお事です。
何故ならば、その人から直ぐに訴えられてしまうのですから、、、。
秋は並木の葉が大量に落ち、雨水を含んで重くなり、その掃除も力仕事です。
これは、最終的には手に負えなくなって、庭師に任せてしまいました。
こんな住人たちの努力と美の意識のお陰で、街の美観が保たれているのでしょう。

その美しさを引き出しているのが、並木道に電柱や電線が全く無いことです。
最近日本でも、電線やケーブルは全て地下に埋め込み、 電柱の一本も無い美しい街が現れ、
それをセールスポイントにしていますが、それとは違って、 私達の住んでいた地域は、
敷地の前後に道があり、正面玄関は、お向かの家の玄関と向き合う形で並木道に面しており、
一方、裏は車一台が通る事の出来る程度の道で、其処には電柱が並び、我が家と裏の家のガレージや
バックヤードへの入り口、 そしてゴミ置き場がありました。
それ故、裏道で仕事が実行出来るゴミ収集車も表通りにでは姿を現さないで済むのです。
また、自分の敷地内、それがバックヤードでさえ洗濯物は干せません。
何故ならばほとんどの家庭は、洗濯物は乾燥機で乾かすのが常識ですから。
洗濯物や布団等で満艦飾にはためく日本の団地のベランダの様な景色はどこにも
ありませんでした。
このような美意識の観念によって家並みが整然と碁盤の目のように拡大されているのですから、
街並みが美しいのは当たり前です。


 Part2に続く

Moral & Common Sense
道徳と常識