かくして翌週、私の曲はこのバンドのメンバーによって魂を宿らされたのです。
アレンジの段階で、コンピューターによってマニュプレートされた音を使って
Jazz Bandの擬似演奏は既に経験していたのですが、実際、本物の音で演奏さ
れると、夫々の楽器の倍音や共鳴音も伴い、其の耳慣れたメロディーは幅の広
い音へと変化して行き、 鳥肌の立つような、ぞくぞくっとする感動を覚えました。
正直言って、“嬉しい!”と言う感情より、私の曲に対して、バンドのメンバー達が
どの様な反応を示してくれるのか、、、と言った方が気になり、とても不安でした。

演奏が終わると、クールなバンドのメンバー達は、
“良いんじゃない!”と、 一様に褒めてくれましたが、トップクラスの作曲家達が
アレンジをした、一流の曲を常日頃演奏 している彼らにとって、
私の曲はまさに幼稚なサウンドそのものでした。
それは、私自身、一番自覚している事です。
そんな私の不安をよそに、心優しいバンドマスターのロブは、大層私の曲を
気に入ってくれ、 その後、コンサートの度にウォーミングアップの曲として
使ってくれたのでした。 (簡単だから準備体操に丁度良いのです!)

しかし現実は、作曲家の私より、ピア二ストの私をバンドは必要としていたよう
です。
当初、シリアスな彼らの中に入って自信の無いピアノを演奏するという事は、
正に針のむしろに座っているがごとくの心境、その上、失敗するたびに恥をかき、
泣きたくなる様な事も多々あり、“もうやめようかなぁ?” と、思う事も度々でした。
しかし、思い留まる事が出来たのは、“本当にジャズが好き!”と言う事と、
“これが私の長年の夢だった!” そして、“こんなチャンスは二度とない!”
と言う強い思いに尽きます。

やがて日々を重ねる毎、メンバー達との親交も深まり、一人前のピア二ストと
してバンドの メンバーに認めてもらえる存在になって行ったのでした。

このバンドの活動は、年に2〜3 回のコンサート(クリスマスコンサート、
サマーコンサート、その他)があり、それに向けて毎週、 練習をしているのです。
基本的には、同好会のようなアマチュアバンドなので、メンバーも流動的、
Jazz Big Bandは17名が基本数ですが、(バンドマスターを含めると18名)
このBandはいつも20名以上が集合し、一時は3人のドラムが在籍していた時期
もあり、 ナカナカの人気バンドでした。
また、作曲できるメンバーが私を含め4人も(内1人はプロ)いて、 コンサート
には夫々のオリジナルを発表する等、可なりユニークなバンドの様でした。

そして帰国するまでの5年の間、私は浦島太郎の如く、夢の世界(竜宮城)で
ジャズを奏でていたのでした。

私のアレンジした“Yearnin’”の前半を Real Playerで再現しました。
良かったら、お聞き下さい!

バンクーバー物語
Song's name is Yearnin'
Back to Part 2
Essay Index
Episode 11
このジュークボックスをクリックしてみて!

Real Audio "Yearnin'"
最後のBand練習日、メンバーからバンクーバーの絵をプレゼントされる。1998年
English Version of Jazz Big Band #3