乳児の患者さんを麻しんから守るためのお願い

成人も麻しんワクチン2回接種が必要です。

今や、麻しんは成人から流行がはじまる病気です。下のグラフをみると、沖縄で流行したと騒がれた2018年よりも2019年のほうが3倍ぐらいのペースで増えているのがわかります。神奈川県内でも発生しています。麻しんが流行して社会問題になった2014年よりもずっと多いのがわかります。そして、患者さんの多くが、0歳、1歳児と成人なのです。
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国立感染症研究所のホームページから引用

2015年3月、WHO西太平洋事務局は、日本は麻しん排除を達成したと認定しました。しかし、上記のグラフでもわかるように、2018年以降、日本でも再び増加しています。そのうち15%ほどは、渡航先から持ち込まれた症例で、その他はおそらくそこから伝染したものと思われます。
いくら海外にいっていなくても、免疫がなければ麻しんにかかり、さらに他の人にうつしてしまいます。
そして、0歳児の患者数が一番多いのですが、それは麻しん(MR)ワクチンが定期接種として認められているのが1歳からだからです。
当然ですが、特に未接種の子が麻しんにかかれば、症状は重く、死亡することもあります。
保護者の方に求められているのは、2回接種です。通常は子どもの頃に1回接種しているはずで、若い保護者は定期接種として2回している人もいます。しかし、もし記録がなく記憶があやふやだったら、ぜひもう1回(合計2回)接種をしてください。
もし、麻しんにかかり、ご自分のお子さんや、小児科クリニックや保育園などで乳児にうつしてしまったら、大変なことになります。
幸い、横浜市では、そのような成人のMRワクチンを比較的安価(¥3300)で接種できる制度があります。詳しくはこちらのページをご覧ください。

1歳になったらすぐにMRワクチン

赤ちゃんが1歳になったらすぐにMRワクチン接種。遅くとも1歳2ヶ月になる前に接種を済ませてください。その赤ちゃんが1歳になるまで麻しんにかからないで済んだのは、おにいちゃん、おねえちゃん、そしてパパやママ、皆がワクチンをしていてくれたからです。「おかげ様で」なんです。麻しんの初期は、かぜとかわりありませんから、最初はわかりません。もし、1歳2ヶ月以上のお子さんが麻しんにかかり、クリニックを受診したり、保育園を利用していたりすれば、大変なことになります。加害者になってしまい、うつされた子に後遺症が残ったり、死亡したりすれば、裁判になってもおかしくありません。
当院でも、1歳2ヶ月以上でMRワクチンを済ませていない場合は、診察すること自体をお断りしたいです。診療拒否と言われると困りますが、いらしていただく赤ちゃん守るためには、そう思われてもそうするしか仕方ないくらいに強くお願いしなくてはいけないことだと思っています。

乳児のうちにMRワクチンを接種することができるか

2019年現在の普通の状況下では、通常は乳児に麻しんの免疫を与えるためにMRワクチンを接種する必要性は大きくはありません。しかし、時々外国帰りの日本人や外国人旅行者などが麻しんを国内に持ち込んで問題になります。麻しんの患者さんがいる地域に行くような場合、ご希望があれば、生後6ヶ月以上の乳児を対象にして、MRワクチン(麻しん単独ワクチンはほとんど流通していません)の接種をしています。ただし、乳児期は抗体を獲得する能力が低いので、定期接種の時期にはあらためて接種が必要になります。タイミングについては接種時に医師にご相談ください。
なお、定期接種ではないので、健康被害がおきたときの補償は通常の薬の副作用が起きた場合と同じになります。
また、流行時などワクチンの供給が不足しているときは、専ら当院で予防接種をしてくださっている方を優先させていただきます。