子宮頸がん予防ワクチン(2022年度まで公開していたホームページ)
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子宮頸がんは感染症

子宮頸がんの原因は、ほぼ100%がヒトパピローマウイルス(HPV)というウイルスの感染です。多くの場合、性交渉(皮膚や粘膜同士の接触)によって感染すると考えられていて、発がん性HPVは、すべての女性の約80%が一生に一度は感染していると報告があるほどとてもありふれたウイルスです。このため、性行動のあるすべての女性が子宮頸がんになる可能性を持っています。
ガーダシルで子宮頚がんが100%防げるというわけではないのですが、子宮がん検診と併用することにより、かなりの効果が期待できます。
なお、このワクチンは「感染しても発症を予防する」とか、「発病しても軽く済ませる」ということが目的ではなく、「感染を予防する」ことが大きな目的です。ですから、できれば、セックスを始める年齢になる前(その後では意味がないという意味ではありません)に接種をすることが大切です。

ワクチンの目的と効果

子宮頸がんを引き起こすウイルスにはいろいろな型があります。ワクチンは現在2種類ありますが、効果のあるウイルスの型が異なります。
先発の、「サーバリックス」は2つの型に効果があり、日本では後発の「ガーダシル」は4つの型に効果があるので、尖圭コンジローマという外陰部にいぼができる性感染症の予防にもなります。このため、当院では、現在、「ガーダシル」を主に採用しています。
感染の予防になるのですから、子宮頸がんの予防にもつながるわけですが、今まで集められたデータでは、「ガーダシル」により前がん病変が予防できることは確認されていますが、子宮頸がんに対する予防効果については、まだ確認されていません。しかし、子宮頸がんは、前がん病変の後に発症するので、前がん病変が予防できれば、子宮頸がんの予防に直接つながると考えられます。

クリニックでお配りしているおすすめリーフレット(pdf)
クリックすればpdfファイルがダウンロードできます。

接種スケジュール



子宮頸がん予防ワクチンには2種類あり、当院で2014年現在、採用している「ガーダシル」以外に「サーバリックス」があります。
上記のスケジュールは「ガーダシル」のものです。
定期接種として無料で接種できるのは、小学校6年生~高校1年生の5年間です。
海外でも10~13歳ぐらいでの接種が推奨されています。
それ以上の年齢の方も、有料ですが、接種を受けることはできます。
なお、WHOの推奨接種スケジュールや、現在、製造承認を待っている新しいガーダシル9(さらに守備範囲を広くしたワクチン)など、追加でお伝えしたい情報については、こちらをご覧ください

副作用

一般的なワクチン同様、接種した後には、注射した部分が痛んだり、痒みを感じることがあります。また、注射をした部分が赤く腫れたりすることがあります。全身的な副反応としては、疲労感や頭痛、吐き気、嘔吐、下痢、腹痛などがあらわれることがあります。
なお重い副反応として、まれにショックまたはアナフィラキシー様症状を含むアレルギー反応、血管浮腫が認められることがあります。(このあたりの表現は他のワクチンも同様です)
接種はふつうの予防接種と違い、筋肉注射なので、通常肩に接種します。接種部位の痛みは、かなりあるようですが、自然にやわらぎます。
「痛い」と思いこんでいる子もいて、接種後緊張のあまり倒れることがまれにあるそうです。保護者が付き添っていただくのが一番ですが、ひとりでいらっしゃる場合は、接種後しばらくクリニックで休むことができるような時間的余裕を持っておいてください。
なお、後述する積極的な接種勧奨中止のきっかけになった報告として、2013年に報告された、杉並区の中学生の報告があります。2011年10月に子宮頚がん予防ワクチン(サーバリックス)を接種直後に、発熱や嘔吐のほか、腕、肩、背中のしびれの症状が出て、翌日から10日間入院手足のしびれなどの症状が出現。退院後も足のしびれで車いすを使う状態が続き、2013年1月までほとんど通学できない状態となり、その後、症状が快方に向かっているため、通学を再開したが、関節痛と頭痛は続いていて、杉並区はワクチン接種が原因として医療費などの費用を支給することとしたという報告です。その他にも、接種時の痛みなどをきっかけに倒れたり、失神に近い状態になったりしたケースがあるようです。
重い副作用で報告されたものは、複合性局所疼痛症候群(CRPS)という症状にあてはまる病気もあるようです。これ自体ははっきりと原因がわかってはいないのですが、交感神経が異常に働いて、痛みを強く感じてしまうというような病気です。また、当初は副作用と思ってフォローされていた方が実際には他の免疫疾患であったというような場合もあります。
また、思春期の女の子は感受性が強く、失神などのイベントが起こりやすいということも、これらの副作用に関係していると思われます。
そういう意味では小6(無料で受けられる範囲で一番若い年齢)のうちに済ませてしまうのもおすすめできる方法かもしれません。

積極的な接種勧奨の中止について

上記の2013年6月の女子中学生の報告をきっかけに、厚生労働省は約半年間をめどに「接種の積極的な勧奨」の一時中止という決定をしました。現在、それが長引き、子宮頚癌ワクチン(HPVワクチン)の接種勧奨が中止されていますが、定期接種が中止されたわけではないので、小6~高1の間であれば、ワクチンの接種は当院でも無料でできます。
子宮頸がん予防ワクチン接種後の、広範な疼痛・運動障害の頻度は10万回の接種当たり数例と決して多くありません。2013年12月に開催された第6回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会に示されたデータをみても、複合性局所疼痛症候群(CRPS)、急性散在性脳脊髄炎(ADEM)、ギラン・バレー症候群の自然発症の頻度と比べても1桁少ない結果でした。
厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会は、子宮頸がん予防ワクチンによる副反応そのものの発生頻度は非常に低く、接種と広範な疼痛・運動障害の因果関係については、複合性局所疼痛症候群(CRPS)、急性散在性脳脊髄炎(ADEM)を自然発症した患者が紛れ込んでいる可能性が高いとの判断を示しました。
海外でも同じワクチンが使われていますが、WHO、英国、米国では因果関係はなしと結論づけていて、通常どおり接種は続けられています。  
子宮頚がん患者数は年間約1万人、死亡者数は約3000人で、性行為の低年齢化もあり、特に若年層で患者が増加傾向にあります。
子宮頚がんワクチンは、子宮頸がん患者全体の6~7割の原因となっている16型、18型のヒトパピローマウイルスの感染を予防します。もちろん、それ以外の原因による子宮頚がんもあるので、将来の定期検診は大切ですが、接種するメリットはデメリットよりもはるかに高いと思います。
なお、「痛み」は心因性のファクターも強く関係するので、できるだけリラックスして受けられるよう、なじみのかかりつけ医での接種がすすめられています。
このまま接種が控えられていると、おそらく将来の子宮頸がんによる女性の死亡は、接種をしていた場合に比べ、年間1000~2000人程度は多くなると思います。
厚生労働省も命にかかわる問題なので、本音のところでは接種を再開したい様子(伝聞)とは聞いていますが、行政ですので、いったん勧奨を差し控えてしまったものを再開するタイミングや根拠を模索しているようです。
それから、大きな問題は、日本のマスコミのありかたです。ここまで偏った(私たちからすれば間違った)報道をしておいて、旗色が悪くなりそうとなったら「あっ、まずかったかな、そっとしておこう」です。マスコミも、どうも子宮頚がん予防ワクチンは問題ないらしいということは気付いているはずです。ただ、あれだけ叩いた後ですから、間違ってたみたいですとは言えないようです。
ノーベル賞受賞者の、本庶佑先生が、受賞の挨拶の中で、日本の医療についてのコメントを求められ、子宮頚がん予防ワクチンについてもコメントしました。「子宮頸がんワクチンの副作用というのは一切証明されていない。日本でもいろいろな調査をやっているが、因果関係があるという結果は全く得られていない。厚労省からの(積極的接種)勧奨から外されて以来、接種率は70%から1%以下になった。世界で日本だけ若い女性の子宮頸がんの罹患率が増えている。一人の女性の人生を考えた場合、これは大変大きな問題だ。マスコミはワクチンによる被害を強く信じる一部の人たちの科学的根拠のない主張ばかりを報じてきた」と話したそうです。そして、医学や科学の問題について論じる際にマスコミ関係者に注意してほしい点として、「科学では『ない』ということは証明できない。これは文系の人でも覚えておいてほしいが、科学では『ある』ものが証明できないことはない。『証明できない』ということは、科学的に見れば、子宮頸がんワクチンが危険だとは言えないという意味だ」と述べ、「なぜこれを報道しないのか。先日学会でも講演したが、ルワンダなど(リソースの少ない国)でもワクチンを導入して子宮頸がんが減っている」とコメントしました。
ここで、大切なことは、ノーベル賞受賞者のこれだけ大切なコメントを、マスコミはあえて報道しなかったということです。
日本は言論の自由があるから、マスコミは本当のことを教えてくれるだろうなどという幻想はもたないほうが良いです。
マスコミにとって、副作用で苦しんでいる人がいるかもしれない(おそらくはいないのですが)ということに寄り添うほうが、明らかに年間3000人が死亡する、将来死亡する人に寄り添うことよりも、ずっと大切なことだと考えているわけです。皆さんはそんな国に住んでいるのです。
2020年2月10日の世界的な医学雑誌(Lancet)には、国や自治体からのワクチンの積極的接種勧奨を2013年から2019年までに差し控えをした結果、1994年から2007年までに生まれた女子では、一生涯のうちに、24600~27300人が子宮頚がんに超過罹患し、5000~5700人の超過死亡につながる(これから子宮頚がんにかかったり死亡したりする人も含む数)と推計されることが、報告されています。新型コロナウイルスの死亡数(2020年2月時点)よりもはるかに多く、若い世代の死亡が多いことを感じとってください。

国のパンフレットが作用が少~し変化している

なお、横浜市は、厚生労働省が2013年に作成したこちらのリーフレット(pdf 663kb)を接種前に読んでから了解の上接種を受けるように案内していますが、あまり翻弄されないほうがいいと思います。
2018年になって、厚生労働省のリーフレットも、こちらのリーフレット(pdf1386kb)に事実上変更されたようです。一部に星川小児クリニックからのコメントを入れてあります。これらの2つのリーフレットを比較すると、厚生労働省が表向き対応は変えていないとしても、本音のところで扱いがかなり変化していることがわかり、興味深いと思います。まず目立つのが、古いリーフレットでは「積極的にはおすすめしていません」だったのが、新しいリーフレットでは「積極的におすすめすることを一時的に休止しています」に変化したこと。さらに、新しいリーフレットでは、文章にはあからさまには出ていませんが、次項の名古屋市の調査を引用していると思われる部分があります。このようなことは、以前は国としてはとても書けなかったことではないかと思います。
話題がとびますが、日本社会の医療に対するみかた(文化)はやや偏っていて、何でも100%を期待するところがあります。福島県の県立大野病院で、日本では非常に稀ではあるものの出産時に妊婦が死亡したことを産科医師の責任にして、手錠をかけて逮捕した事件(福島県立大野病院産科医逮捕事件(のちに無罪確定)の、行政、警察、マスコミの対応も、先進諸外国では考えられないようなこのような対応になってしまう例として、イメージが重なります。マスコミだけでなく、警察も、裁判も暴走する危険をはらんでいます。

副作用があるのかないのか、あるとすればどのくらいの頻度なのか調査をした名古屋市

2015年1月、被害者の会愛知支部の方が河村市長に面会され、市内のワクチン接種者全員を対象にした調査をするように要望したそうです。それを受け、大規模な調査(対象が約70000人でそのうち約30000人が回答)が実施されました。接種者だけでなく、接種していない人も含めた調査になりました。回答者の70%は接種した人で、30%は接種を受けていない人からでした。2015年12月の速報として出された結果によると、子宮頚がん予防ワクチンのせいで起こるのではないかと疑われた症状(24症状)は、接種した人に多く起こっているということはなく、むしろ15症状についてはかえって少ないという結果が出てしまったそうです。もちろんこの調査にはバイアスがかかります。ワクチンを接種した人は、何かの症状があれば、「症状あり」と回答しようとするので、ワクチンを接種した人のほうが症状が高くでる可能性もあります。ですから、それでもワクチンを接種した人のほうがかえって症状が少ないという結果が出たことは、特筆すべきかもしれません。一方、ワクチンを接種していない人の回答率は接種している人に比べて低いので、症状が出たから回答しようという気持ちになったという人がいるのではないかというバイアスも考えなくてはならないでしょう。
結果的には、最終解析でも、ワクチン接種と、24症状との因果関係は否定されていました。
ただ、大きな疑問があります。中間解析を含む速報が、2016年6月18日に、Webサイトから削除され、かわりに生データだけがpdfで公開された形になりました。
これを「名古屋市が結果を撤回」と報道してしまったようなのですが、真相はそうではなく、「最終解析を公表すると困ったことがおきる」と考えて、隠さざるをえなくなったということのようなのです。このことは、「名古屋市子宮頸がんワクチン副反応調査「事実上撤回」の真相 」というサイトが参考になるかと思います。簡単に言えば、「ワクチン接種者のほうに症状が多くでるはずだと思って調査をはじめたのだけれど、そうではない結果がでてしまったので、都合が悪くなった」というようなことのようです。こういうのはもう科学でもなんでもなく、ドロドロとした何だかとっても良くないものって感じがします。
(この項目は、村中璃子著:薬剤でっちあげ あまりに非科学的な子宮頚がんワクチン阻止運動-新潮45 eboolletを参考に、私見も加えて書きましたが、このことについてどなたとも論争する気はありません。大切なのは患者さんの幸せです。)

子宮頸がんワクチンについてお話しする会(現在は必要性が低くなったので行っていません)

子宮頸がん予防ワクチンについては、副作用かもしれないとされる有害事象の報道以来、国の「積極的な勧奨の中止」を受け、袋小路に入ってしまったような状況が続いています。
しかし、このままでは、近い将来、特に若年齢に多い、年間3000人前後の女性の子宮頸がんによる死亡は減らないだろうと言われています。子宮頸がん予防ワクチンを受けるか受けないかは、ご本人やご家族の選択ですが、今の状況は「副作用が問題になっている怖いワクチンだからやめておこう・・・」というのが多くの方の状況ではないでしょうか。
現在、関連した学会からは、接種再開を強く求める声明も次々に出されています。(日本産婦人科学会日本小児科学会
さらに、WHOも、日本の接種勧奨中止の継続について、名指しで批判する声明も出しています。
また、2016年5月に札幌で行われた日本小児科学会学術集会の、「日本におけるヒトパピローマウイルスワクチンの現状と課題」というシンポジウムでは、会場内の9割の小児科医らが接種勧奨再開を求めていることが浮き彫りになったと報じられています。

星川小児クリニックでは、あくまでも当院がかかりつけである患者さんを対象にして、「子宮頸がんワクチンについてお話しする会」をときどき行っています。この会は院長が約30分程度のお時間をいただき、子宮頸がん、子宮頸がんの予防対策、子宮頸がん予防ワクチン、副作用かもしれないと言われている病態について 、一般の方にわかりやすくご説明する会です。通常の予防接種外来などでご説明ができれば良いのですが、時間が少し長めにかかるので、それを補完するような時間と思っていただければよいのではないかと思います。ワクチン反対派の方などとディベートするような会ではありません。
この会は非公開ですが、この会にご関心のある患者さんは、「クリニックの患者さんへ」というページの中にある、メールマガジン(3)子宮頸がんワクチンについてお話しする会の案内を受け取るためのメールマガジン にご登録いただくと、日程についてのお知らせがいきます。(現在はありません)
参加できる方の条件やお約束ごととして、以下のことをお願いしています。
  • 当院をかかりつけにしてくださる患者さん(予防接種などを主に当院でされている方で、もし子宮頸がんワクチンの接種を受けるとしたら当院で接種される方)のご家族に限定させていただきます。 ※男の子のご家庭でも、関心があればどうぞご参加ください。
  • 患者さんご本人も理解できそうであれば参加可能ですが、疾患の特性上、説明会の中では性行為に関するお話しもでてきますので、あらかじめご了解ください。
  • 他の医療機関の医療従事者や報道関係の方の参加、見学は、こちらからお誘いした方以外はできません(当院かかりつけの患者であれば患者さんとしての個人的なご参加は差し支えございません)
  • 説明会の後、内容や感想などを、ブログやホームページにアップするようことはしないでください。
  • 会場では録音、録画は禁止させていただきます。