2021-22シーズンのインフルエンザワクチンの意義について

新型コロナワクチンとインフルエンザの同時流行が心配された昨シーズンは、ほとんどインフルエンザが流行しませんでした。
今シーズンについての考え方をまとめてみましたので、参考にしてください。

インドではインフルエンザAが発生している

確かに、昨シーズンは、ほとんどインフルエンザが流行しませんでした。みんながマスクをしていたからではないかというような話もありますし、夏に南半球で流行がなかったからではないかとも言われています。
そうであれば、今シーズンも同じなので、流行はしないと思います。
しかし、心配な状況が実はインドで起きています。
インドというと、皆さんは真っ先にデルタ株(インド株)のことをイメージされるのではないでしょうか。
そのインドでも、新型コロナの新規の患者さんの数は日本と同じように減少しています。

インドの新型コロナウイルス感染者の推移

しかし、新型コロナウイルスの患者さんにかわって増えているのがインフルエンザAの患者さんです。
「ウイルスの干渉現象」という言葉をご存じでしょうか。
日常診療でも、よくご説明しているので、聞いたことがあるという方も多いのではないかと思います。
ある地域であるウイルスが流行していると、他のウイルスが流行しにくく、勢いが落ちてくるとかわりに他のウイルスの流行がはじまるという現象です。
例えば、年末にノロウイルスが流行すると、インフルエンザの流行のスタートが遅れるということもあります。
新型コロナウイルスも、第1波、第2波・・・第5波と言われていますが、それぞれ主役になっている株(新型コロナウイルスの中のさらに細かい「型」)が違型います。つまり、気が緩んだから第○波が来たのだというよりも、違う「型」が、従来の「型」にとって変わったということでもあるのです。
また、昨シーズンは、新型コロナウイルスの第3波がちょうどインフルエンザの流行期に重なったので、ウイルスの干渉現象もあってインフルエンザが流行しなかったのかもしれません。
それでは、インドでデルタ株が落ち着いた後どうなったかが気になるところですが、他の新型コロナウイルスの「株」にとってかわられているかというとそういうことではないようです。そのかわりに、インフルエンザAが急増しはじめたようです。
もちろん、今のところ他の国で同じことが起こっているわけではありませんが、日本では、冬になるとインフルエンザが流行するというのは定番ですから、昨年は新型コロナウイルスに奪われていたインフルエンザの指定席があいた頃が心配ということもいえます。
例年のように12~3月頃に流行とはならず、少しずれる可能性もあります。

インフルエンザが流行しなかったとしてワクチンで免疫を高めておく意味がある

ご説明したように、今シーズン、インフルエンザが流行るのか流行らないのかは、今のところ未知数です。
しかし、もし今シーズンインフルエンザが流行しなかったとしても、いずれは流行しますので、毎年のワクチンを続けておくことは意味があります。
2021年6月頃にRSウイルスが大流行しましたが、意外に年長児も多く、しかも私たちの印象では普段の年よりも症状が重かったです。これはおそらく2020年に、インフルエンザだけでなく、RSウイルスの流行も全くといってよいほどなかったため、子どもたちの免疫も十分に維持できておらず、RSウイルスに対する免疫レベルが下がっていたところにRSウイルスが流行したため、いつもだったら鼻かぜで終わるような年齢の子も、気管支炎や肺炎を起こすことが多かったのかもしれません。
同じようなことがインフルエンザでもあると、今シーズン、あるいは、来シーズンが非常に心配です。
そのような意味で、インフルエンザに対する免疫力を高めておく機会として、例年どおりインフルエンザワクチンをすることは、昨シーズン流行がなかっただけに、むしろ例年以上に重要ということもいえます。
もちろん、インフルエンザワクチンは、新型コロナワクチンに比べれば「かからなくするパワー」は弱いですが、子どもにとっては、新型コロナウイルスよりも、インフルエンザのほうが怖いので、重症化を防ぐという意味で接種することに意味があると思います。

インフルエンザワクチン接種の時期/ワクチンの供給量

例年どおり、10月~12月中旬を考えていますが、ワクチンの供給量は例年の60%ぐらいと言われていますので、不足するかもしれません。一方で、どうせ流行らないから、接種は見送ろうという人が多くなる可能性もあります。一番大きい影響があるのはマスコミですが、昨年のように「インフル・コロナ同時流行」というような煽り方はしないと思います。とすれば、十分に供給は足りるのかもしれません。衆議院選挙もありますし、マスコミが他の話題に夢中になっておとなしくしていてくれれば、ワクチン不足にはならないのではと思っています。
また、ワクチン不足にならなければ、2022年1月頃まで、淡々と接種していくこともあるかもしれません。
大切な情報は「メールマガジン」でお知らせしていきますので、ぜひご登録ください。

参考になる記事

ネット上のニュースですが、以下の記事はわかりやすいです。