イギリス滞在二ヶ月目、学校は一週間余りのホリデーを迎え
私たち留学生は、留学斡旋団体が主催するスコットランド・エディンバラへの
小旅行へ出かけた。
連日のステイメイトvsホストマザーのトラブルに疲れきっていた私は
この旅がいい気分転換になることを願って、胸を高鳴らせ列車に乗り込んだ。
ところが、この旅の終わりに、
私は気分転換どころじゃない大きな転換を迎えることになる。夕方の五時半だというのに、スコットランド首都エディンバラはすでに闇の中。
エディンバラ城など街のあちこちの歴史的建築物がライトアップされていた。
上にも下にも右にも左にも、18世紀の空気が残っている。
中世の世界に迷い込んだようだった。
こんな表現を使いたくないけれど、ディズニーランドにいる、あの時の感じ。一通り景色を見渡すと、電車の中で一緒になった日本人の男の子と宿泊先のホステルへ。
狭いフロントでカードキーを受け取ると、彼がある異変に気づいた。
「あれ、なんで俺たち部屋一緒なの?」
どうやら私が男に間違えられたらしい。
フロントに部屋を変えてもらうよう頼んでみたけれど、他に空き部屋はないという。
しょうがないので二段ベッドの片方がダブルベッドになっているという部屋に行き、
即にその部屋に滞在していたメキシコ人とエクアドル人の子に、部屋をシェアしても構わないか頼んだ。
実は、この時ものすごく不安だった。
なぜなら、彼女たちが「ラテン人」だったからだ。私のステイメイトはコロンビア人、そう、ラテン人。
彼女は悪い子ではないけれど、感情の表現があまりにもストレートだ。
その性格ゆえホストマザーとの衝突が絶えなかった。
人種や国籍で人の性格を決めつけてはいけないなんて、百も承知だ。
作文にも、いつだって人種や性別で人を見る前に個々で人を見るべきだとステレオタイプのように書いてきた。
けれども、実際いろいろな人種と接する機会に面してみると、
「偏見」している自分がいた。
ラテン人は感情表現がストレートで、
ドイツ人はぶっきらぼう。
なぜだかアジア人だけにしか心を許すことができなかった。一通り事情を説明すると、最初は二人とも戸惑っていたけれどすぐに快く了解してくれた。
そればかりか彼女たち二人がダブルベッドで使うから私にはシングルベッドを使うようにと言う。
悪いので断ると、彼女たちはこう言った。
「気にしないで。ダブルベッドのほうが広いから気持ちいいし、ね?」
もう、一生人種で人を見るのはやめようと誓った。その夜は近場のパブに集合して夜ご飯。(頼んだハギスはおいしくなかった・・・)
久しぶりに、十数人の日本人と再会。
私は、留学斡旋団体の英会話教室に参加していなかったし、*ノンキャンパーなので
他の日本人留学生に知り合いなんてほとんどいなかったけれど、特にためらいもなく会話に参加した。
日本人の結束力は恐ろしい。
聞いたところによると、毎週のように電話をしたり一緒に会っている人もいるらしい。
それは良いのか悪いのか。今の私にはわからない。*ノンキャンパーとは集中語学キャンプに参加しなかった留学生のこと。
日本人のノンキャンパーは男子約10人と女子は3人のみ。八月末に一日かけてオリエンテーションを受けた後、出発した。
キャンパーと呼ばれる人達は八月はじめに出発し、現地で約一ヶ月の集中語学キャンプに参加している。
ほとんどの日本人はキャンパー。夜は、ちょうどテレビでやっていた「リング」を中国人と日本人の数人で鑑賞。
ベッドに戻ったのは一時半。
頭痛でなかなか寝付けなかった。
一日のうちに二つの言語を使う生活は結構ハードだ。
旅行中、頭が痛くてしょうがなかった。
改めて、帰国子女の友達や先輩後輩を尊敬した。
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