ロタウイルスワクチン


生後6週から接種できます。

ロタウイルス感染症

ロタウイルスの感染により、乳幼児を中心に冬に流行する感染性胃腸炎のことです。他にも感染性胃腸炎を起こすウイルスはたくさんありますが、中でもロタウイルスによる胃腸炎は重症になりやすく、水様性の下痢や嘔吐が長く続き、消耗も激しいものです。日本では死亡例はまれですが、重症で死亡することもある感染症です。感染力が非常に強く、保育園などで流行しやすいウイルスです。

ワクチンの目的と効果

ワクチン導入後、冬の嘔吐下痢症での入院が劇的に減りました。ワクチンの目的は特に低年齢の児をロタウイルスの感染から守ることです。当初費用が高いことも懸念されましたが、定期接種化され、費用負担はなくなりました。ただ社会全体の費用対効果という面からみても、親御さんの休業という社会的経済的損失を考えても、確かに効果のあるワクチンといえるでしょう。

ワクチンの種類と接種スケジュール

ロタウイルスワクチンは、ワクチンの種類が2種類あります。

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効果はほとんど同じとしか言いようがないので、どちらを選んでいただいてもいいと思います。
ただ、ロタテックが3回接種なので、ロタテックの2回接種に比べると、効果が長期間持続するというデータはあるそうです。(ロタリックスと比較したわけではありません)
注射ではなく飲ませるワクチンなので、赤ちゃんにとって負担ではありません。回数が増えることはあまり気にしなくてよいと思います。
接種スケジュールは簡単で、4週間以上の間隔をあけて2回または3回飲んでいただきます。
なお、下段のほうに「回数が規定より少ない場合の効果」というコメントを載せてありますので、ぜひ参考にしてください。

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したがって、他のワクチンを遅らせないためにも、原則として「他のワクチンとの同時接種」とするとうまくスケジュールが組めます。
生後14週6日までにワクチンを開始することが強く推奨されています。これはロタウイルスワクチンの副作用として懸念されている腸重積が起きやすい月齢を避けるという意味からそのようになっています。
なお、生後14週6日の日付、および、ロタリックスを接種できる最終日、ロタテックを接種できる最終日を知りたい場合は、ここをクリックすると簡単に計算できるサイトにリンクしています。
そのような意味で、「急ぐ」ワクチンなので、できれば、生後2ヶ月になったらすぐに、ヒブ、肺炎球菌、四種混合などがはじまるときに一緒に最初のワクチンを飲むのが良いと思います。ただ生後6週からは接種できるので、生後6週になったら、B型肝炎とロタウイルスワクチンを受け始めるのも良いです。当院のおすすめスケジュールでもどちらにしろ4週間あけるタイミングを利用して飲んでいただくようにしています。

副作用

現在は使用されていない「ロタシールド」というワクチンでは腸重積の発生が接種を受けた子にやや多く発生しましたが、現行のワクチンではほとんど問題はないようです。もし腸重積になったとしても、それはワクチンを接種していなくても一定の確率で起こる病気なのですから、的確に対処すれば問題はないと思います。(※腸重積:生後半年~2歳ぐらいの子どもに多い病気で、腸が腸の中に入り込んで、腸閉塞を起こします。胃腸炎などがきっかけになることもありますが、原因不明なことも多いです。いちごジャムのような血便、間欠的に激しく泣くといった症状が見られたら、可能性がありますので、救急外来を受診する必要があります)

回数が規定より少ない場合の効果

以下は、定期接種になる前に、コストのご負担をおかけして接種を勧奨せざるを得なかったときに作ったものです。ご参考になるかと思い、残してあります。

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ロタリックス(標準接種回数は2回)を1回で済ますとどうでしょうか?
ロタテック(標準接種回数は3回)を2回で済ますとどうでしょうか?
実は、それでもかなりの効果があることが経験的に知られています。
回数を減らした場合の罹患率や抗体獲得率について書かれている研究もあるのですが、ロタリックスとロタテックについて同じ方法で検討したわけではないので、比較することはできません。
ただ、それぞれのワクチンについて、わかりやすくするためにイメージをお伝えすると上の表のような感じです。
はっきり言えそうなことは、「1回だけの接種では効果はない」では全くないということです。高額なワクチンですので、私見としては回数を減らす方法もあって良いと思います。例えばロタテックを2回で済ます、というのも費用対効果の点では結構効率がいいのかもしれません。もちろんロタリックスを1回するのと、ロタテックを2回するのとどっちがいいかとか、そういうデータは全くありません。赤ちゃんのワクチンを節約するのは、何となく後ろめたい気持ちになるかもしれませんが、とにかくこのワクチンは高いし、とても全員ができるものではないので、こんなこともお話ししても良いと思います。インフルエンザだって2回ではなく1回でなんてよくある話です。当院では「エコノミーモードもあり」と考えています。