髄膜炎菌ワクチン

髄膜炎菌感染症とは

化膿性髄膜炎のうち、髄膜炎菌を起炎菌とするものを髄膜炎菌性髄膜炎といいます。髄膜炎を起こす病原性の細菌はいくつか知られていますが、大規模な流行性の髄膜炎の起炎菌は髄膜炎菌のみであることから、流行性髄膜炎ともよばれます。日本では、終戦前後に4,000例を超える髄膜炎菌性髄膜炎の報告がありましたが、戦後は発生数は激減(1990年からは年間1桁)しました。しかし、最近は海外との交流も増えたためか、2017年は25名、2018年は32名と徐々に増えています。
髄膜炎菌は、細菌性髄膜炎を起こす他の細菌の100倍から1000倍という大量の内毒素を産生します。このため、症状が急激に進行し、致命率は19%と報告されています。発症から24~48時間以内に患者の5~10%が死亡し、回復しても、約10~20%の患者さんに難聴や神経障害、循環不全による壊死が原因で、手足の切断などの後遺症も起こります。

侵襲性髄膜炎菌感染症は学生寮などでの集団感染が報告されています

侵襲性髄膜炎菌感染症は、誰でもかかる可能性がありますが、乳幼児と10代後半に感染のピークがあり、死亡率は10代で最も高いことが報告されています。
侵襲性髄膜炎菌感染症は、人と人の接触が密な場所で発生しやすく、学生寮などの集団生活、食器やコップなどの共有などがリスクになります。

世界の髄膜炎菌感染症発生状況

確かに日本では幸い今のところ発生数が比較的少ないのですが、世界ではアフリカ中部を中心に非常に発生が多く(髄膜炎菌ベルト地帯)、欧米オセアニアのような先進国でもかなり発生しています。今後、国際的な交流が進むと、日本の発生数も増加すると思われます。

先進国では定期接種になっている

主要7カ国(G7)をみてみると、日本以外の先進国(アメリカ、ドイツ、イギリス、フランス、イタリア、カナダ)では定期接種になっています。
それでも、欧米での発生が日本よりも多いのは、国際的な人の交流が多いからなのかもしれません。
日本もいずれは、定期接種となるべきワクチンだと思います。

思春期での接種がすすめられます

現在の日本の状況からは、思春期での接種がすすめられます。特に全寮制の学校に入った方などには、おすすめしたいワクチンです。
ただ、アフリカに移住する場合などは、ご相談ください。

参考にしていただきたいサイト

料金が高いのが一番のネック

積極的におすすめしたいワクチンでありながら、ワクチンの料金が非常に高いのが一番のネックです。
こどもと大人のワクチンサイトには、19000円~25000円と書かれていますが、これはおそらく未承認の輸入ワクチンも含んでのことだと思います。国内で唯一承認されているメンクアッドフィという名前のワクチンは、1回接種なのですが、クリニックが購入できる価格が高いので、当院でも¥23400(税込)となります。渡航ワクチン専門のクリニックなどでもしかしたら輸入ワクチンをもう少し安く接種しているところがあるかもしれません。