食物アレルギーの予防について

食物アレルギーの診療をしていると、どうしたら予防できるのかということを考えてしまいます。最近、そのことが「ほぼこうしたら予防できるだろう」と言える程度にまで確実性が上がってきました。関心のある方は読んでみてください。

食物が皮膚から侵入するのと、お腹に入るのでは大違い

いきなりびっくりさせてしまうかもしれませんが、さまざまな食物が皮膚から侵入すると、体はその食物をアレルゲン(アレルギーの原因になる物質)と認識することがあります。といっても健常な皮膚であればあまり心配はありません。口のまわりにひどい湿疹があったりすると少し心配です。しかし、一方で普通にお腹(消化管)に入ると、逆にアレルギーになるのを防ぐことに役だっているようなのです。
赤ちゃんは皮膚が弱いですし、特に乳児期前半は離乳食が始まっていませんから消化管から食物が入ることでその食物アレルギーを防ぐという仕組みがなかなか使えません。
これも、どうやって食物アレルギーを防ごうか考えるポイントです。

特に乳児期前半は皮膚のコントロールをちょっと念入りに

ですから、乳児期前半は「皮膚からの食物アレルゲン侵入を防ぐ」ことが大切です。
といっても、極端に心配することはありません。「どのくらいスキンケアをすればいいの?」は、ちょっと心配になったら、ぜひ赤ちゃんを連れて一度受診してください。触らせていただいた感じもまた大切です。
ネット上で「スキンケアが大切」と書かれていますから、すごく心配して軟膏や保湿剤をじゃんじゃん塗っている人もいますが、そんなにストレスを感じなくていいと思います。ぜひお話ししましょう。

離乳食について

当院にいらした患者さん(赤ちゃん)には、初診のときに離乳食について、配慮してほしいことをプリントでお渡ししていますが、生後5ヶ月頃になったら、卵、小麦、牛乳など、食物アレルギーになりやすい食品が含まれるものを少しずつで良いので早くあげ始めてほしいということです。一時、「小麦は食物アレルギーの原因になりやすいので、消化管が成熟するのを待って、1歳ごろからあげてください。パン粥はやめてお米のお粥だけにしてください」などという指導があったように聞いていますが、アレルギーになっていない赤ちゃんにとっては、それはリスクを増やすことでしかありません。ご家族がたべたパンは小麦そのものですが、家の埃になって赤ちゃんの皮膚に到達します。床をハイハイするようになったらなおさらですね。
詳しいことは、一般診療の中でもっとご説明できます。アレルギー診療のできる時間帯においでいただけるとスムーズです。当院は「かぜなどの子」と「うつらない病気や予防接種の子」は常に別の待合室ですからいつでも安心して来院していただけます。


確かにキッチンをハイハイすると食物アレルゲンは入りそう(笑)

粉ミルクは母乳栄養のデザートです

実は牛乳については、さらに注意したいと思っています。母乳栄養のメリットは尊重した上でですが、毎日、あるいは隔日でも良いと思いますが、少しだけ粉ミルクもあげて欲しいと、アレルギー科医としては思っています。新生児期は少しだけ粉ミルクを使ったことがあったけれど、母乳がよくでるので、完全母乳となり、保育園の準備で粉ミルクを試してみたらじんましんが出てしまったというようなケースはひとりやふたりではありません。中にはたった1ヶ月だけ完全母乳にしたというだけで、それまでは飲めていた粉ミルクが、アレルゲンになってしまった子もいます。
当院ではそのような場合、治療をはじめますが、牛乳アレルギーの治療は他の食品に比べて理由はわかりませんが、とても難しく時間がかかります。
他の食品のスタートは、離乳食と一緒でもいいと思いますが、牛乳についてはそれではちょっと遅いのではないかというのが私たちの印象です。
そこで、当院では、「粉ミルクは母乳栄養のデザートです」というコピーを作り、予防接種などではじめていらした赤ちゃんにもほんのちょっとの混合栄養(99%母乳でも十分)をおすすめしています。

玄関の前にこんなポスターが貼ってあるのに気付かれましたか?画像をクリックすると少し大きく表示されますが、解像度が悪いです。ここをクリックするとpdfファイル(133kb)がダウンロードできます。
もちろん、「ほ乳瓶に慣れてしまうとどんどんミルク栄養になってしまう」と言って、完全母乳を推進する先生もいらっしゃるのは知っていますが、牛乳アレルギーの治療の難しさやリスクの大きさを考えると、そこまで完全母乳にこだわらなくてもいいのではないかと思います。粉ミルクを作る1さじが20mlなのでそれでもいいですし、スプーン1杯でもいいと思います。アレルギーを予防するのにどのくらいの量が必要なのかはまだ研究がはじまったばかりというところです。少なくとも混合栄養あるいは人工栄養のお子さまでは牛乳アレルギーはほとんどいないというのは本当です。



2010年にイスラエルから発表された論文の中のグラフですが、生後14日以内に粉ミルクを開始できた赤ちゃんからは、牛乳アレルギーの発症が極めて少ないというデータです。
しかし2019年に生後72時間以内に粉ミルクを飲んだ赤ちゃんからは食物アレルギー発症率が高くなるというデータもでているので、出生直後の粉ミルクは逆にリスクを高めるかもしれません。このあたりは今後の研究が待たれます。

離乳食がはじまる5ヶ月頃から「美味しい食物アレルギー予防ワクチン」がおすすめ


美味しい食物アレルギー予防ワクチン

当院の受付にいつも「お土産物(笑)」のように置いてあるのが、実は「美味しい食物アレルギー予防ワクチン」です。
卵、牛乳、小麦、大豆、エビといった食品は、特に除去しようとしなければ普段の食品に入っていますし、簡単に手にはいります。
しかし、最近多いのは、ナッツ系のアレルギーです。ナッツはそのままでは、赤ちゃんには誤飲の危険もあるのであげられないですね。特にパパやママはナッツが好きなときは赤ちゃんの皮膚から入りこみ、アレルギーの準備をして待っていることがあります。3歳ぐらいになってはじめてクルミをたべたカシューナッツをたべた・・・というようなときに、はじめて症状が出るわけです。
その他、ソバやゴマも同様で、つい忘れがちです。
そこで、当院で考えたのですが、アーモンド、カシューナッツ、マカダミアナッツ、クルミ、アーモンド、ピスタチオ、ピーカンナッツ、ゴマ、ソバ粉、を、ピーナッツクリームに混ぜて赤ちゃんにちょっとずつあげる方法です。マカダミアナッツについてはオーストラリア、ピーナッツについてはカナダでも似たような方法がとられているようです。
作り方は簡単です。ここをクリックすると、1分の動画にリンクしています。ここをクリックすると、簡単なレシピ(pdf)がダウンロードできます
もちろん、アレルギーがある子にはあげないでください。でも生後半年ぐらいなら、ナッツ類のアレルギーになっているような子はほとんどいませんから、動画のように白湯に溶かしてほんのちょっとあげてみると良いと思います。赤ちゃんの間ぐらい、週に1~2回ぐらいでも良いと思います。むしろ年齢があがれば皮膚からの感作(アレルギーの獲得)の機会も多いので、もしかしたらアレルギーになっているかもというようなこともあるのです。

乳児期後半はのんびりスキンケア

スキンケアを乳児期前半と乳児期後半に分けると、なぜ乳児期後半は「のんびり」で良いのでしょうか。
もうおわかりだと思いますが、離乳食の工夫と、「美味しい食物アレルギー予防ワクチン」で、ほとんどの食物アレルギーは予防できるといってもいいんじゃないかなあと思います。もちろん適度なスキンケアは続けたほうが良いと思いますが、それは「歯は磨いたほうが良い」というようなもので、クリニックで処方した薬を毎日忘れずに塗ってくださいというようなことはあまりありません。
また、乳児期前半に比べると、後半からは生理的に肌が少し乾燥気味になりますが(幼児期から思春期まで)、皮膚も丈夫になってきます。

アレルギー予防マップ

クリニックの待合室にはいくつか掲示物がありますが、

こんな掲示、見覚えありますか?「アレルギー予防マップ」です。
ここをクリックすると、pdfファイルをダウンロードできます。
当院の患者さんには印刷して差し上げていますが、ぜひアレルギーの予防が間に合う乳児期前半のうちに目を通して参考にしてください。
このページのコンテンツのまとめのようなものです。

昔はどうして食物アレルギーがほとんどなかったんだろう

ところで、昔、といっても昭和の頃ですが、食物アレルギーの患者さんはほとんどいませんでした。小児アレルギー科医の仕事といえばメインは喘息の管理でした。なぜ食物アレルギーの患者さんが少なかったのでしょうか。食生活が変化したからなどと言われていましたが、もしかしたら離乳食にヒントがあるのかもしれません。その頃に子どものスキンケアといったってたいしたものはありませんでしたから、スキンケアよりも離乳食がその答なのかなと思います。食材は今ほど豊富ではないし、おそらく離乳食といっても親が食べているものを柔らかくして与えていたのではないでしょうか。同じものを食べていれば、「食べていれば予防になる」のであれば、皮膚に多少トラブルがあっても食物アレルギーにはなりにくかったのかもしれません。もっとも食物アレルギーの血液検査などできませんでしたし、食物アレルギーそのものの存在があまり信じられていませんでしたから、原因不明で終わっていた可能性もあります。でも、赤ちゃんの離乳食が「●~●ヶ月用」などと分類され、スーパーの棚に並ぶようになり、親と子が全く違うものを食べるようになってきたことは、食物アレルギーの増加と無関係ではないと思います。
ひとつ思い付くことがあります。当院にも中国人の患者さんが多くいらっしゃいますが、食物アレルギーの赤ちゃんは今のところとても少ないのを感じます。よく聞くと、やはり親の食べる食材を使って離乳食を作っているということです。ここに何かヒントがあるような気がします。

日本に旅行にきてはじめて蕎麦を食べた外国人がアレルギーをおこさないわけは


私たちは蕎麦アレルギーの心配はありません・・・「えっ?なんで?」

外国人が日本に観光に来て、はじめてお蕎麦を食べることってありますが、それでアレルギー反応を起こしたという話は・・・もしかしたら稀にあるのかもしれませんが、ほとんど聞きませんね。でも、日本人には蕎麦アレルギーは結構聞きます。なぜなんでしょう。それは外国人(特に西洋人)は生まれてから蕎麦アレルゲンに暴露されていないので、皮膚から入ることがないから・・・です。たぶん。

当院の食物アレルギー診療について

当院の食物アレルギー診療は、かかりつけの小児科として、かかりつけの患者さん(普段の診療や予防接種もされているようなお子さま)との関係を大切にしながら行っています。食物アレルギーは独立した病気ではなく、呼吸器のアレルギーとも深い関係がありますし、呼吸器のアレルギーは、普通のかぜとも症状も似ているばかりでなく、相互に影響しています。そのような意味で、地域のクリニックから紹介されて、負荷テストなどのリスクのある検査を専門的にするような大病院のアレルギー外来とは違います。
詳しいことは、こちらのページでご案内しています。