横浜市の保育園における食物アレルギーの対応について

保育園(正式には保育所といいます)における食物アレルギーの対応については、保育園のことなので、横浜市子ども青少年局により、指導されています。保育所における食物アレルギー対応マニュアルが発行されており、保育園はもちろんですが、市内の小児科医療機関に配布されています。これは、横浜市独自の対応というわけではなく、厚生労働省のガイドラインに沿った内容です。個々の患者さん(園児さん)により、オーダーメイドの診療をしていくべきなのは当然ですが、このマニュアル(インターネット上でも公開されています)に沿って、保育が行われていることを保護者の方もご理解いただければと思い、ここにご紹介します。

除去食の申請について

食物アレルギーの園児さんが入園すると、通常、保育所におけるアレルギー疾患生活管理指導表(前述の対応マニュアルの中にあるものです)という書類が渡され、食物アレルギーを診ている医師に記入してもらうように言われます。
年度替わりの月など、「どの医師でもいいから書いてもらってきてください」というような保育園もありますが、医師が印鑑を押して発行する書類ですから、診断書と同じレベルのもので、「紙あれば何でもよい」というわけにはいきません。アレルゲンになりそうな食物の除去をするように言われているのであれば、その医師に依頼をしてください。
また、保護者が除去をしたいからという理由での除去、必要以上に厳密な除去食の指導表などは、保育園にとってもご迷惑になりますのでお書きできません。
発行料は有料として扱うように指示されていますので、当院では¥500をいただいています。(医療機関によって金額は違います)
なお、これは良いこととも思えないのですが、ほとんどが「保護者と相談して決定」になってしまうのが、この管理指導表です。確かに、保育園との相談は大切ですが、それを補完するものとして、食物アレルギー対応表があります。これは保護者が書く様式ですが、保育園への情報提供としてとても大切なので、丁寧に記載をしてください。

生活管理指導表(除去食の申請)を書くために、アレルギーの血液検査や負荷検査は必須ではありません

生活管理指導表とともに、アレルギーの検査データを一緒に提出するように求める保育園がありますが、それは必須ではありません。
検査は医師と保護者で相談の上、児のために有益だと考える場合にのみ行います。これは当院だけの方針ではなく、ごく当たり前のことです。
保育園から強く求められて困る場合は、当院の診療の場で医師にご相談いただくか、横浜市子ども青少年局に電話などでご相談ください。
また、負荷検査(食物を実際に食べさせて反応をみる検査)をしないと、生活管理指導表を受け取らない(除去食の提供ができない)という保育園もありますが、全くの誤りです。

保育園により、完全除去食と普通食の二者択一の保育園と、部分除去対応をしてくれる保育園にわかれます

保育所における食物アレルギー対応マニュアル、10ページに「安全な給食対応のためには単純化が望ましく、原則、除去対応とします。」とされています。つまり原則は、完全除去か普通食の2種類しかないということです。これは、厚生労働省のガイドラインがそうなっているので、それに従うとすれば仕方ない部分もあるのですが、実際には、卵そのもの(一次製品)はまだ食べられないけれど、卵がつなぎなどに少しだけ含まれている食品ならば食べられる、お菓子に含まれているくらいは大丈夫という程度、牛乳を1本は飲めないけれど牛乳の含まれているシチューなどは全く大丈夫という程度のお子さんは大変多く、2~3歳にもなると、本当に完全除去をしなくてはならない子は非常に少なくなります。また、耐性誘導(食べられるようになること)のためにも、少しは食べた方がよいということはよく知られていることです。ですから、可能であれば、中間的な対応をしていただけるとうれしいというのが保護者の本音ではないでしょうか。実際に公立保育園が率先してそのようにしている自治体もあります。しかし、横浜市の場合は、公立は全園、完全除去か普通食の二者択一です。ただ、民営の保育園(横浜市は公立保育園はとても少なく多くは民営です)を含めると、だいたい対応は半々で、かなりの園が中間的な対応をしてくれます。食物アレルギーがわかるのはたいてい0歳のときですから、お子さまの重症度に応じて、保育園選びのひとつのポイントとして考えてみてはいかがでしょうか。

除去食を解除するときは、生活管理指導表ではなく除去解除届(保護者がご自分で記入)を使います

お子さまが成長し、徐々に除去食が必要なくなってきたら、医師と相談の上、除去食解除届を保護者が記入して保育園に提出すれば大丈夫です。生活管理指導表と違い、医師のサインも必要ないのでお金もかかりません。生活管理指導表の提出は必要ありません。除去食解除届のリンクは横浜市の対応マニュアルそのものですから、それをA4版で印刷してご使用いただいても大丈夫だと思います。また、横浜市の対応マニュアルの根拠にもなっている、厚生労働省監修の「保育所における食物アレルギー対応ガイドライン」にも、「除去していた食物を解除する場合は親からの書面申請で可とする」と書かれていますので、保育園もそのように対応してくれると思います。ただ、どの程度で除去食の解除を認めてくれるかは、現実には保育園によってまちまちです。横浜市の除去解除届について何かお困りのときは、当院または保育園との間のことであれば横浜市子ども青少年局にご相談ください。
ただし、保育園からすれば、保護者からの申告だけで解除するのは不安もあると思いますので、できるだけ詳しく書いてあげてください。「皮膚がちょっと赤くなることはあるけれど、アナフィラキシーなどの心配はありません、○○をこのくらい食べたが何も症状がありませんでした」というような具体的な記述があると安心してもらえると思います。
なお、除去食の除去解除届についてという、保護者向けの解説プリントを当院で作りました。嘱託医をしている保育園にはお送りしてありますし、保育園に理解をしていただくのにも役立つと思いますので、よろしければご利用ください。