気管支喘息を診療するための機器

ぜんそくの診療につかうツールは、聴診器1本と吸入器ではありません。年齢にもよりますが、さまざまな医療機器があります。

フローボリュームカーブの測定



写真のような、スパイロメーターという機械を使って測定します。
思い切り、そして長く息を吐いてもらい、瞬間瞬間の吐く息の速度を測定します。
ちょうど、A駅からB駅までの電車の速度変化のグラフのようなイメージです。
すると以下のようなグラフが書けます。



ぜんそくの人は発作でないときでも、最大瞬間風速(ピークフロー)が出た後の、速度が急に低下しますので、(A)と(B)を比べるとわかるように、下に凸のカーブになります。ぜんそくの症状が出ていた期間が長い子は、どうしても(B)のパターンに近い状態になってしまうのですが、この度合が顕著な場合は、より注意が必要です。この検査は小学校3年生ぐらいからなら可能です。

呼気中一酸化窒素の測定

ぜんそくの本質は気道の慢性的な炎症です。とくに、白血球の中の好酸球による、「好酸球性気道炎症」が、その中心にある病態です。呼気中の一酸化窒素の濃度は、「好酸球性気道炎症」のレベルをよく反映します。



息をほぼ一定の速度で10秒間吹き続けると、パソコンの画面にでてきた気球を向こう岸まで届けることができるよ!
保育園幼稚園の年長組さんぐらいから挑戦!(ゲームです)
そうすると、呼気中の一酸化窒素濃度が測定できます。

  小児 成人 評価
低い <20 <25 吸入ステロイドを増やしても反応する可能性は低い
中間 20~35 25~50 臨床症状を参考に慎重に解釈する必要がある
高い >35 >50  吸入ステロイドを増量すると改善する可能性が高い 

呼吸抵抗の測定


上の写真のような、モストグラフという機械を使って測定をします。安静呼吸だけで測定できるので、4歳ぐらいのお子さまから測定が可能です。


▲健常者の例


▲気管支ぜんそくの患者さんの例(女性、小児では正常の人でも上記の例よりも少し抵抗が高いこともあります)

気管支ぜんそくの患者さんは、健常者に比べ、呼吸抵抗が高くなります。 呼吸抵抗をフォローすることによって、薬剤の調整もしやすくなりますし、薬剤中止後、ある程度の期間をおいて測定することにより、本当に薬剤を中止しても大丈夫かどうかを評価するパラメーターのひとつにもなります。長期的にみると、「薬剤の使いすぎ」も防げますし、それ以上に「本当に必要な治療をしなかったために悪くなってしまった」というようなことも未然に防ぐことができます。

さらに、短時間作動性の吸入性気管支拡張薬の吸入前後で測定すると、さらに別の視点から情報が得られます。


▲吸入前後で比較した例

上のグラフは短時間作動性の吸入性気管支拡張薬の吸入前後で測定して、比較したもので、改善率も計算できます。
健常者は当然のことですが、吸入しても変化しないはずです。気管支ぜんそくかもしれないというような方の場合、一見ふつうだと思っていても、気道がわずかに収縮し、呼吸抵抗が本来あるべき状態よりも高い場合には、短時間作動性の吸入性気管支拡張薬による反応があるわけですから、気管支ぜんそくの症状が隠れているということがわかります。
実際にこれをきっかけに治療をしてみると、運動時に楽になったり、しつこい咳がおさまったりすることがあります。
治療を続けるかどうかは、医師とよく相談をしてください。

ピークフローメーター



写真のような、比較的簡単な器械です。小学生ならば簡単に測定できます。
最大瞬間風速を測る器械と言えば、わかりやすいと思います。
クリニックでも測定することがありますが、むしろ家庭で毎日測定すると、喘息の管理にとても役立ちます。
役立て方(技)はいろいろあります。診療のときにもお話ししますが、関心があったらこちらのページを読んでください。

風ぐるま



医療機器メーカーでは製造していないので、なかなか入手しにくい器械です。(笑)
この器械を小さなお子さんの口元に持ってゆくと、大きな息をしてくれるので、ふつうの息だと思っても、ぜんそくの症状が少し混ざっているのかどうか、比較的簡単にチェックすることができます。
当院ではこの器械は結構活躍しています。