乳幼児医療費助成と救急外来
タダだからいつ受診しても同じじゃないかって
そんな気持ちで救急外来を受診する人は少ないと思いますが……
都市によって対象年齢や金額は違いますが、乳幼児医療費助成制度がある地域は本当に多くなりました。救急外来のような時間外の診療を受けても、窓口で払うお金は「無料」というケースもとても多いです。このため、患者さんの中には「いつ行ったって無料なんだから」という意識を持ってしまう人もいて、急ぐ必要のないことはわかっていながら、救急外来を使う人が、残念ながら増えているように感じます。
そのような受診のために支払われる費用(はっきり言って余分なお金)を、実はほかの人に(つまり税金で)払ってもらっているということは忘れてしまっているようです。
もしもこの費用が浮いたとしたらどうでしょう。たとえば重い病気の子への補助をもっと手厚くできるかもしれません。(以下はちょっと視点がずれるので削除)救急外来の医師が、本来診察が必要な子の治療にもっと専念できるのはもちろん、医療ミスの可能性も減らせることができるでしょう。 もちろん、医療費の助成があることは病気の子をもつ保護者にとってとてもありがたいことで、あったほうが良いに決まっています。しかし、その制度を利用する側(患者さんも医療側も)のモラルが伴わなければ、せっかくの制度もかえって仇になります。
みなさんのモラルで、小児科の救急医療が、そして医療費の助成制度が崩壊しないようにしてほしいと思います。
受診する側の意識でもっと制度が活かされる
Dr.「乳幼児の医療費助成って、それ自体はよい制度だとは思うんだけど……。利用者の立場からみてどうなのかな。」
Ns.「はっきり言って、家計的にはずいぶん助かりましたよ。子どもが小さいときって、本当にお金がかかるんで。小児科にかかる回数も多いですから、自己負担だときついかもって思うこともあったですね。でも無料だからって、必要がないのに受診するわけではないですものね。」
Dr.「普段の診察だったらそれほど問題ないんだけど、救急外来のことを考えると手放しで歓迎というわけでもないんだよね。今の救急外来が抱える問題、たとえば軽症の患者さんであふれて、重症な子の診療の妨げになったり、担当医にかかる負担がどんどん重くなって、結局は救急外来が運営できなくなるとかいう、そういう問題の一端を医療費助成が担っているという批判をよく聞くよ。」
Ns.「制度そのものよりも、受診する側の意識の問題ということなんでしょうね。」
Dr.「医療は受ける側のためにあるものだけど、利用の仕方を間違えると、そのしわ寄せは結局患者さん自身にきてしまうんだよね。それをうまく誘導するには時間外の受診に対してはやっぱり多少は自己負担を求めるとかしないと、残念だけど今の日本の社会モラルではコントロールできないんじゃないかという先生もいるよ。確かにそうすることで、市民の利益にもつながるような気もするんだけれど・・・」
Ns.「でも、本当に救急外来が必要な人には無料にしてあげたいですね。」
Dr.「そうなんだ。これから生まれてくる子どもたちにも、安心して必要なときに救急医療が受けてもらえるように、このことはみんなで考えていかないとね。」