小児の新型コロナウイルスについて(12月14日更新)

小児のコロナウイルスの症状

成人に比べると感染しにくい(感受性が低い)可能性が示唆されています。
感染者を調べてみると、家庭内感染によることが多く、学校や保育園で感染している例は少ないです。
感染しても、無症状や軽症が多く、発熱や呼吸器症状がないことも多いので、外来で感染者と非感染者を区別することは難しいです。
味覚異常、嗅覚異常は、小児ではあまりみられません。(若年成人で多い)
日本では20歳未満の年齢層での死亡例は1例もありません。

静岡市の統計(12月14日掲載)


静岡市の2020年12月11日までの累積感染者数

人口約70万人の静岡市の統計を紹介します。
全部で674名の感染者のうち、15歳以下は21名(3.1%)で、重症度は、無症状が13名で、軽症が8名です。
感染経路は、家庭内が18名、その他が3名でした。
※このデータは公表されたものですが、静岡厚生病院の田中敏博先生よりご教示いただきました。

周囲の流行状況(発生状況)が知りたい

小児のコロナウイルス感染症はほとんどが無症状か軽症なので、誰を検査するべきなのかという問いに明確に答えることは難しいです。
しかし、多くの医療機関や行政が拠り所にしている、日本感染症学会の提言(ガイドラインのようなものです)によると、地域で感染ルートがはっきりしないコロナウイルス感染症の患者さんが発生しているときは、発熱している人は全員検査するのが望ましいとされています。しかし、成人と小児は行動範囲も違いますし、小児は発熱する子が多いので、一律に同じ条件で検査をするのは、現実的ではありません。
同学会の提言でも、小児については、「小児例は同居家族や園・学校を発端者とした濃厚接触者スクリーニングで発見される場合が 多く、小児を発端者としてのクラスター発生の報告はほとんどありません。そのため、小児科の診察にあたっては、周囲の流行状況を確認することが大切です。」ともわざわざ特別に書かれています。
つまり、小児は発熱する子が多いが、行動範囲が限られているので、家庭や、学校、保育園などの状況を把握すると効果的に診断にたどり着けるのではないかというわけです。
インフルエンザでも、ご家庭の状況、学校や保育園での発生状況が非常に大きな手がかりになります。
ただ、インフルエンザは小児でも症状に特徴があるので、症状だけでもかなり診断に近づくことができますが、新型コロナウイルスは小児の場合は症状が無症状か軽症がほとんどなので、症状から絞り込むことが難しいので、さらに、周囲の状況を知ることが大切です。

それでは、周囲の流行状況が確認できるかというと、実はそこが問題です。
横浜市の場合は市役所の健康安全課という課の外には、クラスターが発生しない限り、情報を出してくれません。同じ市役所の子ども青少年局にも情報が伝わらないので、保育園にも情報が届きませんし、福祉保健センターでも隣接区の情報はわかりません。横浜市医師会にも情報が伝わらないので、医療機関にも情報が伝わりません。学校で発生しても校医にも教えてもらえません。現在各方面から改善してほしいと要望は出しているようですが、なかなか改善されないのが現場としては悩みです。
確かに、小児は無症状か軽症がほとんどなので、学校や保育園で仮に関係者が発症したとしても、そこから広がることはほとんど無く、小児科のクリニックも同居の成人が数日前に発熱している場合などを気をつけて診療していますし、当院の病児保育室は入室時に無料で抗原検査をしていますので、それで何とかできるのですが、やはり、周囲の状況がわかっているといないとでは検査をするかしないかという判断にも影響が大きいです。

当院では、かかりつけの患者さんにお願いして、噂話でもいいので、匿名で情報を提供していただいています。
ここをクリックしていただいて、小さな情報でも良いので教えていただけますでしょうか。
どうかよろしくお願いします。

小児のPCR検査や抗原検査の意義

小児のコロナウイルス感染症のほとんどは無症状か軽症で、小児にとってはインフルエンザやRSウイルス感染症のほうが本人への影響ははるかに大きいです。ただ、老人や免疫不全の方に感染させてしまうと影響が大きいので、社会的に大きな問題になるわけです。
その逆がRSウイルス感染症で、小学生以上のお子さんにとっては鼻炎程度、成人ですと無症状の方も多いのですが、0歳児に感染すると、それでもその一部ですが、呼吸不全を起こし、集中治療室管理が必要になることがあり、死亡することもあります。(なお、最近は老人のRSウイルス感染症も介護施設などでの流行があり注目されています)
そういう状況下で、小児のPCR検査や抗原検査の意義を考えてみました。(感染経路が不明の患者が横浜市で出ているという条件で)
  • とりあえず感染経路が不明で患者が発生している地域で生活している環境下(2020年の春~冬の横浜市はそうなります)では、学会の提言どおり発熱→検査とするという考え方もある。発熱したら早期に検査をしておけば、翌々日の朝には結果がわかるので、診療や検査がお互いに安心して行える。
  • そのような地域では、家族が発熱や体調不良がある場合、学校への登校を控えるように言われてしまうことがあるので、その場合はその家族の検査を行って陰性であれば登校できるようにしてもらう交渉材料にすることも考えなくてはならない。(症状がある人の検査は健康保険が使えて検査料金部分は無料になりますが、無症状の子どもでは検査の料金が自費になります)
  • 無症状や軽症の子どもがほとんどだとしても、原因がはっきりしない熱が続く場合は、除外診断としてのコロナウイルス検査が現時点では必要になる。
  • 今後、経過によっては基幹病院に転院しなくてはならないことも考えなくてはならないような症状の場合、PCR検査(唾液)をしておけば、翌々日の朝には結果がわかるので、陰性であれば基幹病院でも受け入れがしやすく、検査や治療がスムーズにいくので、医師のほうから検査をすすめることもある。
  • 保護者の職種によっては、子どもが発熱した場合などに、検査を要求されることもある。例えば、がん治療をしている医師や看護師の場合などはそれにあたるかもしれない。そのような場合は、医療機関としても検査に協力したい。
  • 病児保育室を利用する場合はお互いに安心して利用するために検査を受けることをお願いしている。
このように、確かに、小児だけならば問題がほとんどない新型コロナウイルス感染症ですが、小児をとりまく社会の状況によって、小児の検査の必要性についての考え方も大きく影響されます。私たちとしては、ウイルスをチェックしたり病気を診断するだけではなく、それ以上に子どもたちの生活をみていくことも大切にしています。学校にも安心していけるように、保護者も安心してお仕事ができるようにといった視点ももちながら、この時期の診療をすすめていきたいと思います。

星川小児クリニックでできるコロナウイルスの検査

当院でできるコロナウイルスの検査は、ビルの構造や設備などから限られてはいますが、上記のような意義があると考え、必要に応じて行っています。
詳しいご案内は、こちらのページをご覧ください。

参考になる資料

濃厚接触者の検査のタイミングでは感染しているかどうかわからないこともある(12/13追加)


新型コロナウイルスの潜伏期は、WHOでは平均5~6日(1~14日)としていますが、家庭内の感染などの報告をみると3~5日ぐらいだと思われます。
ところで、濃厚接触者が検査で陰性だったのに3日ぐらいしてから検査すると陽性になったという話はよく聞きます。
濃厚接触者というのは、「感染者と手指消毒など行うことなく触れ合った、もしくは対面で手を伸ばしあったら届くくらいの距離(1m程度)に15分以上いた」が定義ですが、保健所の濃厚接触者の検査というのはできるだけ早くやるようです。これは、発端になった人にうつした人をさぐる(感染源を探す)ことを第一義的に考えているからなのだと思います。多くの人は濃厚接触者になってしまった場合、自分がうつっていないかどうかを知りたくて検査をしてもらうことが普通だと思いますが、そうであれば、発端者と接触して2~3日での検査では潜伏期からいうと少し早すぎます。5日ぐらい待って検査をして陰性で、しかも症状が全くなければ大丈夫と判断したほうがよいかもしれません。
とくに、学校や保育園などの場合、成人→小児という感染が多い(今まではですが)ので、子どもたちらの感染というよりも、発端者(主に成人)から周囲の子どもたちへの感染を考えて検査をしたほうがよいのかなとも思います。(といっても、保健所が決めることなのですが)

私たちの本音

コロナウイルス感染症は、やはり高齢者や、基礎疾患のある人にとって危険なのであって、小児にはほとんど問題にならないウイルスであることもわかってきました。もちろん社会は小児だけで構成されているのではありませんから、子どもだったら勝手にして良いというわけではありません。でも、上記にRSウイルスの例を出しましたが、いくら低月齢の赤ちゃんにとって危険なウイルスだとしても、鼻水がちょっと気になる成人を検査したり隔離するということもしていません。(したほうが良いというわけではありませんが)
もちろん、ヨーロッパの様子などを聞くと、心配になりますし、介護などに携わっている方のお気持ちも理解しなくてはなりません。
しかし、今の社会の状況は、子どもたちに対して、少し厳しすぎるかな?と、思うところもあります。
感染者が出てしまった、学校や保育園などが世間から批判的な目で見られるのもおかしいと思います。医療機関だってそうです。
子どもたちの心にも影響が出ているのは、日々の診療で感じます。
社会としては、「ちょうど良い落としどころ」を模索している最中なのかなと思います。一時騒がれた「自粛警察」も、あまり見かけなくなりましたし、多くの人が人集まるところではマスクもつけるようになりました。両極端はさけつつ、ある程度は容認し、それほど辛い思いをせずに協力できるところは協力するぐらいが良いのかなと思います。
マスコミの報道姿勢にもかなり影響されますが、「パフォーマンス」ではなく、「実のある」対策が要所要所にある、そういう子ども環境にしてゆきたいものです。