子どもたちにとっての新型コロナウイルス(2022.1.3~以後書き足しています)

小児のコロナウイルスの症状

ほとんどの小児が、軽症または無症状で、普通のかぜ(あるいはそれ以下)です。
また、流行初期に比べ、デルタ株以降は、感染しやすいがそれまでの株に比べ、さらに軽症になっていると思われます。

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皆さんがよくご存じのインフルエンザやRSウイルスと比べてみると、

上記の統計は、2021年夏までのデータを組み合わせたものを引用させていただいたのですが、子どもたちにとっては、インフルエンザ、また小さな子どもたちにとってはRSウイルスのほうがリスクが高いことは、コンセンサスになっています。世界的には小児の死亡率は、約200万人に1人と推測されていて、それも基礎疾患のある小児がほとんどだということです。ただの普通かぜであっても、基礎疾患のある子どもにとっては死亡に結びつくことはゼロではありませんから、そのことを軽視するわけではありませんが、数字として冷静に比較しておきたいと思います。

小児のコロナウイルス感染者は増えていくのか

もちろん、小児はワクチンを接種していないので、今後流行するとすれば、今までよりは小児の感染者が数としても割合としても増えることは容易に想像できます。
2021年11月の時点で、全米では新規感染者の25%が小児であったということです。ヨーロッパでも同じ傾向があり、欧米では、小学生ぐらいの小児では、すでに25%以上が新型コロナウイルスに感染していて、他の年齢層よりも高いくらいだとういうことです。
しかし、日本では、2021年11月16日時点で、10歳未満の感染者は、94083人なので、人口比では、1%程度です。

小児にとっての新型コロナウイルスワクチン

5~11歳の新型コロナウイルスワクチンが先進国を中心に開始されています。

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欧米に比べて、流行していない日本で、このワクチンをどのように利用していくかは悩ましい問題です。
今のうちにしておくべきだという考え方ももちろんあります。
しかし、どの国であっても忘れてはいけないのは、「成人や基礎疾患のある人たちのワクチン(現時点では3回目)が完了していれば、それらの人の重症化は十分抑えられる」ということです。
日本に比べ、欧米は高齢者であってもワクチンの接種率が低い傾向がありますし、マスクをする習慣も日本よりは徹底していないので、高齢者を含む社会全体を守るためには小児にも協力してもらいたいという本音があるのかもしれません。
日本ではどうしたら良いでしょうか。国は「よくご検討ご理解の上」とか「ご家庭の判断で」というような言葉でしか表現しないかもしれませんね。

これまで子どもたちは十分すぎるほど協力したと思います

しかし、これまで、小児は成長に必要な時間を犠牲にして、我慢させられてきたと思います。これは、日本小児科学会がホームページで訴えているイラストです。

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子どもにとっての1年は、成長に必要なとても大切な1年です。学習の機会を奪われ、心の発達が損なわれ、抑うつ傾向、情緒障害になってしまう子が多数います。
親子ともストレスが増大し、家庭内暴力や、子ども虐待のリスクが高まります。

2020年には子どもたちの自殺が前年度に比べ激増しましたが、新型コロナウイルス感染症そのものによる死亡がほぼゼロなのに比べてとてもショックな数字です。
さらに、十分なフォローがないままに、学級閉鎖などをすれば、子どもたちへの影響だけでなく、医療現場の人手不足が起こり、医療崩壊が起こり、かえって社会全体では死亡率があがってしまうという試算もされています。
ここまで子どもたち、子どもを持つご家庭に我慢を強いてきたことは忘れてもらってはいけないことです。
ワクチン接種をためらっている成人(特に高齢者)がいらしたら、ワクチンが無かった頃に子どもたちの努力に守られてきたことを思いだして、今度は子どもたちの生活、成長をを守る番だと思っていただけないでしょうか。

今後、保育園や小学校で流行しはじめたときに心配なこと

今の制度のまま、流行期に突入したら、「無症状だろうが、軽症だろうが、どんどん検査して休園、休校し、本人だけでなく濃厚接触者も14日間出席停止」となり、ワクチンを接種していて感染していない家族も仕事もできないというような状態になると思います。医療だけでなく、いろいろな仕事がストップするでしょう。上のイラストに描かれている悪夢の再来です。
さらに、どの保育園、どの小学校で感染者がでているのかは、横浜市の場合、行政から医療機関に細かく情報を出してくれません。このような行政のかたくなな姿勢も感染者の拡大に影響すると思います。

小児科学会の記事から参考になる資料

検査するにしても適切な時期がある(症状の軽い子どもの検査は慌てずに)

新型コロナウイルスの潜伏期は、WHOでは平均5~6日(1~14日)としていますが、家庭内の感染などの報告をみると3~5日(オミクロン株ではもう少し短いようですが)ぐらいだと思われます。
ところで、濃厚接触者が検査で陰性だったのに3日ぐらいしてから検査すると陽性になったという話はよく聞きます。
濃厚接触者というのは、「感染者と手指消毒など行うことなく触れ合った、もしくは対面で手を伸ばしあったら届くくらいの距離(1m程度)に15分以上いた」が定義ですが、保健所では濃厚接触者の検査というのはできるだけ早くやるようにすすめるようです。これは、以前は発端になった人にうつした人をさぐる(感染源を探す)ことを第一義的に考えていたからなのだと思います。多くの人は濃厚接触者になってしまった場合、自分がうつっていないかどうかを知りたくて検査をしてもらうことが普通だと思いますが、そうであれば、発端者と接触して2~3日での検査では潜伏期からいうと少し早すぎます。5日ぐらい待って検査をして陰性で、しかも症状が全くなければ大丈夫と判断したほうがよいかもしれません。
保育園や学校は、保健所から園児に早く検査を受けてもらうようにと急がされる傾向があります(横浜市の保健所は潜伏期のことは計算せず、急ぐことが感染拡大を防ぐのだと考えているそうです)が、慌てて受けるとこういうことはしばしばあります。保育園、学校、保健所も、感染したと思われるタイミングについては、個人情報保護を盾に教えてくれないことが多いので、医療機関でもアドバイスがしにくいのですが、そこが検査のタイミングには重要なポイントになります。

私たちの本音

コロナウイルス感染症は、やはり高齢者や、基礎疾患のある人にとって危険なのであって、小児にはほとんど問題にならないウイルスであることもわかってきました。もちろん社会は小児だけで構成されているのではありませんから、子どもだったら勝手にして良いというわけではありません。
しかし、今の社会の状況は、子どもたちに対して、少し厳しすぎるかな?と、思うところもあります。
感染者が出てしまった、学校や保育園などが世間から批判的な目で見られるのもおかしいと思います。医療機関だってそうです。
子どもたちの心にも影響が出ているのは、日々の診療で感じます。
社会としては、「ちょうど良い落としどころ」を模索している最中なのかなと思います。一時騒がれた「自粛警察」も、あまり見かけなくなりましたし、多くの人が人集まるところではマスクもつけるようになりました。両極端はさけつつ、ある程度は容認し、それほど辛い思いをせずに協力できるところは協力するぐらいが良いのかなと思います。
マスコミの報道姿勢にもかなり影響されますが、国や県も市も、「がんばってますパフォーマンス」ではなく、「実のある」対策が要所要所にある、そういう子ども環境にしてゆきたいものです。

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保育園児とマスク推奨 (2022/02/04追加)

保育園児にマスクを推奨しようという厚生労働大臣・・・おそらく小児科医にも何も聞かずに決めたのでしょう。
それならこちらも、穿った見方をしてみようと思います。
保育園で感染者がでたときに、いきなり休園・・・これはもう意味がないし、休園にすると社会経済がまわらないということは学習してきたようです。しかし、そうであれば、濃厚接触者の範囲をせばめておかないとならないわけで、そのためには、「マスクをつけて保育をしていた人は濃厚接触者にならない」というように、デルタ株までよりも規制をゆるめる必要にせまられたのでしょう。
でも、そうすると、園児はどうするの?マスクしていないじゃん・・・ということになるわけです。
じゃあ、園児にもマスクをしてもらおうと安易に考えたのではないでしょうか。
保育士さんから子どもの表情もみえない、息苦しいマスクをつけてそんなに効果があるのでしょうか。喘息の症状なんか見落とされます。
でも、コロナウイルスぐらいでそこまでしなくてはならないのであれば、園児にとってはるかに影響の強い、インフルエンザ、RSウイルスの流行期に、マスクをさせていたでしょうか。そんなことはありませんよね。
もちろん、園児の中にもマスクをつけられる子もいますし、つけるのを嫌がる子もいます。一律につけるべきではないと言っているのではありません。しかし、今回マスクをすすめることにした理由が、大人の都合のような気がしてなりません。そのことを少し書いてみたいと思います。

インフルエンザも、RSウイルスも、皆かかってしまうウイルスです。でも、感染することによって、強くなっていくのです。
おそらく今の新型コロナウイルスも、旧型コロナウイルス4種類と一緒になって、5種類とも、子どもたちが軽いかぜとしてかかって、免疫をつけていくのだろうと思います。
ワクチンをしていない高齢者にとっては、確かに脅威かもしれません。それなら高齢者がワクチンを接種すればいいのです。以前のように、ワクチンがないわけではありません。ワクチンがあるのにしないのなら、それなりの覚悟があるのでしょう。子どもたちに尻ぬぐいをさせるのはやめてほしいです。

連日、重症者の数などが発表されますが、その中に占めるワクチンを2回以上した人、未接種の人にわけた重症化率などは日本ではほとんど発表されません。
ロサンゼルスのデータですが、

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このように、重症化率が高いのは、ワクチンを全く接種していない人であることは間違いないようです。
なお、2回接種していても、罹患はしやすいので、そういう人たちが重症化はしにくいですが、「数」を押し上げます。ですから、全体としては非常に軽症みえるということです。
だからこそ、高齢者で未接種の人に接種を促す必要があるのです。
こういうデータを行政からも積極的に出してほしいのですが、もしかしたら、行政は、あえて発表していないのかもしれません。穿ったみかたですが、それが明るみになると、その人たちを責める世論がでてきてしまうので、それを避けるために隠しているのかもしれません。あえて接種者と非接種者を区別することを避けている可能性はあると思います。

少し話が飛びますが、日本ではワクチン接種証明をあまり活用しません。海外ではレストランに入るときに接種証明を見せれば入れるがないと入れないというような規制の緩和が一般的です。日本でも接種証明アプリはありますが、本人確認が難しいためか、あまり使われていません。海外では「特典」(逆に言えば不利益)を設けて、接種者と非接種者を区別することで、接種をすすめているですが、効果(特にブースター接種)の点でも、特典や不利益の点でももう少しアピールしてもらえたら成人の接種率もあがるのかなと思います。

それでも恐怖を煽り、ワクチン接種率が(ワクチンさえあればですが)高水準になるのが日本人の従順なところですね。

いろいろなことを書いてしまいましたが、このようなことをカモフラージュするためにも「子どもにマスク」なのだとしたらとても悲しいことです。
高齢の未接種者にワクチン接種を促すのは、社会の役目です。でも、子どもの役割ではありません。また、子どもはそういった高齢者のための盾ではありません。
子どもたちが可愛そうです。

<参考リンク>
「2歳以上にマスク推奨」論争  小児科医が真っ向から反対した理由
 岡部信彦先生(元国立感染症研究所所長)