| 医療が崩壊していく(3) | |
| お産難民を増やしてでもメンツを保ちたい役人根性 |
「医師以外は助産師しか内診をしてはいけない」
国が唐突に出したこの通知、いったい何を考えているのでしょうか。医療が崩壊するために出した言葉ではないとすれば、撤回するべきです。しかし、前言を引っ込められない役人体質が、これを阻んでいるのだと思います。
02年、04年、私たち小児科医は良く知りませんでしたが、厚生労働省が、「分娩にかかわる内診は医師以外は助産師以外しかしちゃいけない」という通達を出したのだそうです。しかし、助産師が全分娩に携わるだけの人数が実際に現場にはいないし、そのような通知を行う必要もないはずであることなどから、日本産婦人科医会はとうてい受け入れられないので反対の声明を厚生労働省に出しています。しかし、今回、横浜市内のH病院(産婦人科)で起こされた医療訴訟において、そのことと全く無関係の「看護師が内診を行った」ということが問題にされたことをきっかけにこの問題がクローズアップされることになりました。
もし、看護師が内診をした、看護師に内診を指示したということが罪に問われるのであれば、どういう影響があるでしょうか?
詳しく書かれているのが、「日本のお産を守る会」のホームページや、日本産婦人科医会が作ったポスターです。
京都府の田中啓一先生が、新聞に投稿されていますが、この厚生労働省の通達が貫徹されると、40%弱の妊婦が出産する場所を失うことになるのです。
福島県警による産婦人科医逮捕の衝撃ともあわせ、すでに、産科医になろうという医学部卒業生も激減しています。
厚生労働省が、産婦人科医療を崩壊させようという悪意でやっているのであれば、その目的は順調にそして急速に成果をあげていることになります。
ここで考えつくのは、予防接種の改悪でさんざん厚生労働省がとった姿勢との酷似点です。
それは、一度言ってしまったことは、何が何でも「間違っていたので訂正する」とは絶対に言わないということです。言うとしても「助言」とか「指導」という形で、尻拭いを自治体や医療現場に押しつけるのです。役人は現場のことを知らないので、良かれと思って作ったプランが全く逆の評価を受けることは仕方ないと思います。でも、そういうことがあったら撤回するなり、修正するなりすればいいのです。
しかし、なぜ「今よりも悪くなることがわかっていても(わかってないのかな?)」現場の感覚からあまりにもずれた通達や解釈を押しつけるのでしょうか。おそらく修正や撤回は彼らの汚点になるからだと思います。(昇進に影響するのかな?)
修正、撤回は汚点ではなく英断として評価されるべきことだという意識が厚生労働省に欠けているのではないでしょうか。
厚生労働省の役人は在任期間中だけ繕えばいいのですが、その場当たり的な思いつきの解釈で振り回されて崩壊してしまった医療現場を元に戻すことがどんなに大変なことかわかっているとはとても思えません。