| 研究者に罪をなすりつける厚生労働省 | |
| インフルエンザの国家レベルの研究が厚生労働省のせいで頓挫 |
厚生労働省の研究班「インフルエンザ随伴症状の発現状況に関する調査研究」にかかわる製薬メーカーからの寄付金について
07年3月に、マスコミが厚生労働省の研究班の平成18年度の研究である、「インフルエンザ随伴症状の発現状況に関する調査研究」につき、抗インフルエンザ薬「タミフル」の輸入販売メーカーである中外製薬より、多額の寄付金が研究班の所属する横浜市立大学小児科学講座(横田俊平教授)などに流れているという報道がありました。また、そのために研究にゆがんだ結果がもたらされるのではないかという危惧が指摘されました。さらに、それを受けた形で、厚生労働省は、関係した教授らを研究班からはずすという措置を、当該者には正式に伝えないままにマスコミに発表しました。
当院でも、この研究には協力しており、一部の患者さんにはお子さまが発熱でご心配な中、直接に調査にご協力をいただいておりますが、このたびの厚生労働省のあまりにもひどい対応をに愕然とするとともに、協力してくださった患者さんだけでなく、子どもたちの健康のために研究班に所属し、一生懸命活動された研究者の名誉も傷つけた厚生労働省に対する怒りをおつたえしたく、このページを作成しました。
この調査研究は、インフルエンザ脳症の問題と、新型インフルエンザの流行に備えるため、インフルエンザに随伴する症状の解析を目的としたもので、平成17年度から行われております。
平成18年度の調査は、その調査研究をさらにすすめ、調査対象人数を10000人規模に広げることとしたものです。なぜこのように大規模な調査が必要かというと、脳炎や脳症、異常行動という、比較的稀な症状をも調べるには、小規模な調査では因果関係の有無を統計的に調べることが不可能だからです。
このような調査の必要性については、厚生労働省も終始一貫して認めてきたところですが、平成18年度の厚生労働省の研究補助金は400万円でしかありませんでした。そこで研究班では厚生労働省の担当課と半年以上にわたって交渉を進め、企業(製薬会社)から研究寄付金を募集して、公的機関の機関経理に置いた後に研究に充当するという、極めて透明性の高い方法で、不足している研究資金を調達し、研究を進めることとしました。報道では厚生労働省が黙認というような曖昧な表現になっておりますが、黙認ではなくきちんと了承していたのです。
趣意書をいくつかの製薬会社に配布し、幅広く研究資金の募集を行いましたが、結果として、「タミフル」のメーカーである中外製薬1社から研究資金が寄付されました。これは性善説的な私見ですが、中外製薬はインフルエンザ治療薬としてのシェアは第一位であり、それを安全に使ってほしい、それに役立つ研究であるからこそ社会的責務を感じて寄付をしたのだと考えます。
国が必要な研究資金を用意できないときに、研究者としてとるべきことは何でしょうか。
皆さんは、研究費を製薬会社の寄付金に頼るくらいなら研究を放り出してやめたほうがいいと考えますか?
寄付金を募集した段階で、研究班から退くことが世の中のためになると考えますか?
このような大切な研究は何とかして資金を集め、完成させて欲しいと思いませんか?
また製薬会社の資金がからんだデータは信用できないというのなら、「治験」のデータはどうなるのでしょうか。皆さんが日々使われている薬の安全性、有効性に関するデータは、「治験」を経て、厚生労働省が認可するものです。その「治験」にかかわる費用はすべて、製薬会社が負担することになっています。もちろん「治験」の資金を国が負担し、例数の少ない難病の薬の開発がしやすくできればこれにこしたことはありません。しかし、現実には、ほとんどすべての薬剤について、その安全性、有効性の研究には、当たり前のこととして製薬会社の資金があてにされているのです。
そのような環境の中で、研究班が、国が資金を用意できないのであれば、製薬会社の研究寄付金を募集するということは決して突飛なことではなく、むしろ「よくぞそこまで苦労して集めてくれた」と国民から感謝されても良いくらいのことなのだと思います。もちろん国が負担できれば何の問題もないのですが、現実的には全く不可能な状況でした。
しかし、マスコミは連日のように、当該研究班の責任者に責任があるかのような報道を続け、さらに、寄付金が教授個人に流れているかのように錯覚させる表現をも平気で使っていることには怒りを通り越してあきれるばかりでした。
厚生労働省が、マスコミの暴力に屈する形で、「寄付金についての状況の認識が不十分であった結果、担当課が適切な指導、助言を怠ったことには問題がある」として、謝罪をし、さらに、研究班の班長を研究メンバーからはずすというような行動に出たことは、本末転倒ではないかと思います。
このように、厚生労働省が、何ら非の無い研究班を守ることをせずに、責任をなすりつけ、安易に頭をさげてしまうのは、今後必要となる科学的な研究(インフルエンザの分野、医学の分野に限らず)をすすめる大きな障害になることは疑う余地もありません。
おそらく柳澤厚生労働大臣は、「産む機械発言」で謝る癖がついてしまったのかもしれません。
その後、その寄付金は、全額メーカーに返還されることとなりました。もちろん、患者さんが一生懸命書いてくださったデータはそのままです。国は責任をもって研究を完成させると言っているとのことですが、返還したお金は6億円です。本当に国が責任をもって研究を完成させるとは信じられません。
この研究の結果は07年夏までにまとまることになっていました。その結果が出れば、果たして10歳台のタミフル使用制限が本当に妥当なのか、タミフルの副作用と、インフルエンザによる異常行動とは、関係があるのか、あるいは一部関係があるだけで多くはないのかなど、私たちや国民が知りたいことがかなり解明されるはずでした。
このような「誰かが悪いことにすればいい」「謝ったほうが早い」みたいな安易な国にしたのは誰なのでしょうか。「マスコミが間違っている」「国民の思いこみが間違っている」のであれば、厚生労働省はそれをきちんと説明し、毅然とした態度をとっていただかなくてはならないと思います。年金問題でそれどころではなかったかもしれません。でも、「年金のずさんな管理は国が悪かった。でも、インフルエンザの研究費の件はそれは違います。これが現在とれる最善の方法だと思ったから寄付金を認めたのです。」としっかり説明すればいいのです。