中国の小児医療事情
「熱があったら抗生物質」は日本よりはるかにすさまじい

かかりつけ医というシステムのない都市、そういえば横浜でも似たような状況の人たちもいる・・・


 06年9月、07年7月に、北京市の小児病院の先生がたとお話しする機会がありました。
 その中で、中国の先生が、こんなことを言っておられました。

 このへんのお母さんの圧力(プレッシャーと表現していました)が強く、病院を受診したら、熱が出たら、必ず抗生物質をもらわないと納得しない。例えば、もし熱性けいれんでも起こったら、薬を処方しなかったからだと、とにかく文句を言う。その他にも必要のない点滴(中身も生食などだけではだめで抗生物質入り)、必要のないホルモン注射を要求してくる。熱性けいれんは、細菌感染とは関係ないことは医師はわかっているが説明しても納得してもらえない。悪くなったら責任をとるのか!と、言ってそのときには必要のない強い薬を要求する。日本のように「かかりつけ医」というシステムがなく、いろんな医師がその場その場で対応するシステム。もしある先生が、「これはウイルスによる病気で、自然にしか治らない病気だから(自然に治る病気だから)、抗生物質もいらないでしょう。様子をみていいですよ。」と言ったら、その患者は怒って次の先生のところにかかるだけ。夜だろうとおかまいなし。中国では、文化大革命のときに、医師を粗製濫造してしまったこともあり、人々が医師のことを信頼していないので、こんなふうになってしまった。
 寂しそうに、中国のひどい現状を語られました。

 確かに、中国人の患者さんが、とても必要とは思えない状況で点滴を要求したり、抗生物質を要求したりしてきたことはあるけれど、中国ではそれが当たり前だったのかもしれません。(もちろん断りましたが、すごく不満そうでした)
 そう考えれば、日本はまだましなのかな・・・

 だけど、まるで「救急外来がかかりつけ医です」のような人も、横浜にも結構います。夜間急病センターが、とくに小児科では、コンビニ診療所化してきてから、そういうコンビニ医療に慣らされている人たちをたくさん作ってしまっているようにも思います。ほとんど全員が抗生物質を強引に要求するところまではいかないにしても、普段はそういう「医療機関」を使っている人が、当院にいらしたときは、僕らとしても正直いって「違和感」を感じながらの診療になります。もちろん、患者さんも僕らに「違和感」を感じていると思います。

 これからもコンビニのお店を増やし、全国展開していけばそれでいいのでしょうか。社会もそれを小児科医に望むのでしょうか。その場をしのいでいるのは、「あいてて良かった」の保護者だけでなく、社会全体なのかもしれません。社会の多数がそのような人たちで溢れてしまったとき、中国と同じ状態になり、そこで「本音の医療」「本当にこどものための医療」などを展開しようと思っても、すでに無理な状況になってしまうでしょう。

 中国の悲惨な状況をお聞きしながら、今後、中国が日本のようになるというよりも、日本が中国のようになるのではないか・・・と、ふと不安になりました。